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煮干の添加物は必要悪!?
「酸化防止剤(BHA又は抽出ビタミンE)」これが煮干に使われている添加物です。
勉強不足で申し訳ないのですが、これらの酸化防止剤がどのような原料からどのような工程で生成され、 人体にどのような影響があるのかについては充分に把握しておりません。
語感からすると抽出ビタミンEの方が人体に無害そうですが、本当のことは知りません (どちらも化学的に生成された物質ですから・・・)。
もちろん、両者とも国から認可を受けている添加物です。
なぜ煮干に酸化防止剤を使うのでしょうか?
それは煮干が酸化に無防備な食材だからです。
煮干は文字通りイワシを煮て干しただけの乾物ですから、そのままでは空気に触れるとイワシに 含まれている脂肪分が酸化してしまいます。健康に良いとされる不飽和脂肪酸も、酸化の結果、 別の物質に変化してしまい元も子もありません。酸化した煮干は生臭くなり、不味くなります。 ですから添加物は煮干の品質劣化防止のために使われているのです。
残念ながら、酸化防止剤だけで酸化を完全に防ぐことはできません。そこで、 煮干は流通段階では冷凍保存され、小売の段階では脱酸素剤を用いた気密包装となり、 ご家庭での開封後は冷凍保存をお願いしています。
あの手この手を使って酸化の進行を遅らせているのが煮干流通の現状です。
煮干はどの段階で一番激しく酸化するかご存知ですか?
正解は「製造過程」です。
イワシを煮ている段階では酸素に触れませんが、干す段階では酸素に触れてしまいます。 ここで酸化防止剤を添加しないと、必ず、酸化が進行した煮干が出来上がる訳です(酸化防止剤が添加されていてもある程度の酸化は進行します)。
出来上がった製品は、通常、冷凍庫に保管されながら、製造家~流通業者~小売店へと流通します。
ここで問題となるのは、冷凍庫で保管されていても、速度は遅いのですが、 煮干の酸化は確実に進行するという事実です。要するに、煮干は大なり小なり酸化が進行しながら 流通すると云う事です。
ですから、酸化の進行が許容範囲内に留まっている煮干(お客さまが実際にお使いになる時点でも その範囲内にある)を仕入れる事が私どもの責務となります。
無添加の煮干ってどうなの?
こんなご質問をいただきそうです。世の中には無添加を謳っている煮干が販売されています。
でも、私が知る限り、無添加の煮干の製造工程は普通の煮干と同じです。つまり、 干す工程で必ず急激な酸化が始まります。無添加の煮干は酸化に全く無防備ですから、 普通の煮干に比べて明らかに酸化が進んだ状態で出荷されます。
出来たてのホヤホヤの煮干をすぐにお使いになるのであれば、たとえ無添加でも酸化の 度合いがまだ許容範囲内なので問題ないと思いますが、世の中は思い通りになりません。
製造された煮干は冷凍の状態で流通し、かなりの時間が経過してから食卓に届けられます。 ですから、無添加の煮干は酸化がかなり進行している可能性が高いと考えています。
無添加だからと云って、酸化により不味くなってしまった煮干を取り扱う気持ちにはなれません。
正直な話、酸化の微妙な進み具合は煮干を見ただけでは正確に判断できません。
変色するなど明らかな変化が見られる場合は、すでに酸化が最終局面まで進んでおり、 許容範囲をすでに超えています。
冷凍庫から出したばかりのまだ変色していない煮干の酸化の度合いを正確に知ることはできません。 冷凍庫から出た直後から急速に酸化が進むので、極端な話、無添加の煮干の場合「仕入れた翌々日に変色してしまった」と云う例もあります。
確実な需要予測と確実なイワシ漁があれば、生産者と小売業者が綿密に連携することにより、 酸化の進行が許容範囲内に留まっている無添加の煮干を安定的に流通させることもできるのでしょうが、 現実問題としては不可能な話です。漁は海次第ですし、需要も常に変化します。
お客様が欲しい時にいつでも煮干を買えるような体制を整えるとなると、 どうしても煮干の在庫が必要になります。ですから、煮干の安定供給のためには、 酸化防止剤は必要悪だと考えています。
実は、無酸化・無添加の煮干を生産そして流通させる方法があります。
無酸素状態で煮干を乾燥させ、出来上がりを無酸素状態で流通させれば良いのです。
技術的にはすでに可能で、千葉の水産試験場では実験に成功しています (無酸化・無添加の煮干は本当に旨かったそうです)。しかしながら、 コストが膨大で商業ベースにのらず頓挫しています。
実現の可能性はほぼゼロと思われます。
「それでもやっぱり無添加の煮干がどうしても欲しい」と思ってらっしゃいませんか?
方法がまったく無い訳ではございません。ただし、安定供給は不可能です。
「手に入った時は売り切れご免で売りますが、無いときはまったく無い」 こんな不親切な売り方でよろしければ、出来たてのホヤホヤの無添加煮干をお届けする 奥の手がありそうです。
ここ数年のイワシ漁の状況(かなりの不漁です)から推測するに、良質の無添加煮干を手に入れるチャンスは数少ないと思われますが、「それでも、どうしても手に入れたい」
と思われるのなら