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鰹節屋の昔話
第五十一 話
二代目店主 中野英二郎が語る、戦前から高度成長前夜にかけての、かつお節の話、魚河岸の話、築地界隈の話、東京の話などなど、四方山話を聴いてください
相場観
今と違って、鰹の漁期が決まっていたので、春先から7月までの漁の具合で、仮需要が始ります。全体の生産数量のうち、どんなサイズが多いのか、色々と予想の情報をとるのが、大変でした。この予想の当たり外れによってはその年利益に関わってくるのです。
自己の店の在庫の事もありますが、顧客に情報を提供するのは至難の事でした。買い置きを薦めなければ他店から買われてしまうとか、反対に相場が下がってしまったら責任を問われてしまうことになります。
この閑なとき、業者間の話し合いはとても面白いものでした。かなり昔からお妾と鰹節は、持つて(在庫すること)はならぬなどという格言があります。とは言うものの。相場で儲けるのは、株と同じで売るのに楽なので。つい余計な在庫をしてしまうことになります。
六回あった入札もいまでは、一回か二回になってしまった近頃と比べると感慨深いものがあります。