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鰹節屋の昔話
第四十一 話
二代目店主 中野英二郎が語る、戦前から高度成長前夜にかけての、かつお節の話、魚河岸の話、築地界隈の話、東京の話などなど、四方山話を聴いてください
買い人の方も多士済々
~YSさん~
明治生まれ、日本橋のYSさんは、無言、無表情。自分の入れた値段に自信があるのか、
簡単に訂正出来るのに、殆ど見た事がありませんでした。この方は取り損なった品物を口物(数量が纏まっているもの)でも、 落とした品物を他の買い人には分けてくれない(外すといいます)頑固な?方でした。
勿論口銭付けてもなのです(当時三分口銭が決まり)。
その場で話せば,大抵の方はOKでしたのに、何故と思いましたが、これが真剣勝負なのだと教えられました。
余談ですが、この方日本橋の何代も続いた名門の方で歳も大先輩でしたから、 碌にお話しも出来ませんでした。
ある晩、十人足らずの宴会でこの方が長唄を披露された事がありまして、 邦楽が趣味の私と(私も邦楽のお稽古をしていたもので)話が合ったのか、 やっと話をしてくれる様になりました。暫くして病に倒れてしまって、教わることも 色々あったのにと、今でも残念でなりません。
YSさん、初槍はお酒を飲んでの商いだからと言って、賀詞交換会だけで、入札場には出て来られませんでした。 そして、初槍の一割しか出品のない次の槍の十一日の物を殆ど買っていました。
確かに安いのですが、初槍には各産地とも、極上品の出物が多かったので、次の槍の十一日には聊か質が落ちる品物が多く出ていたのです。
初槍は皆さん酔っているのでご祝儀相場もありますので、無理ないことかもしれません。 でも初槍は、普段は真面目なのにトボケてとてつもなく安い値段を入れて殆ど買わない人も居たりして、愉しい雰囲気ではあったので、 YSさんの行き方を疑問視する人もいました。