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鰹節屋の昔話
第十二 話
二代目店主 中野英二郎が語る、戦前から高度成長前夜にかけての、かつお節の話、魚河岸の話、築地界隈の話、東京の話などなど、四方山話を聴いてください
山本海苔店の若旦那
カフェーのあった路地を出ると、日本橋の山本海苔店の支店(当時出張所と言っていましたが)
と珍味屋さんがあり、波除神社の前の通り、つまり私の家の前の通りに出ます。
山本海苔店はかなり広い店で板敷きの框で大勢の店員が働いていました。
今は海苔は焼海苔ばかりですが、昔は海苔の侭、横開きの戸棚にはいっていて、
取り出してた海苔を、枚数を数えて、一帖ずつ、「山本仕入れ」と書いてある紙にくるんで、
何帖か纏めて、お客様に渡していました。
その中で若旦那と呼ばれていた、今で言えば店長なのでしょう。何時も着物姿で通勤、
子供心に格好良いと思いました。多分、若旦那はお召し(と思うのですが)の高級のを着ていたのでしょう。
お店に出て居るときは店の人と一緒で着物は着て居ませんでした。冬の着物姿は、
二重回ししか見たことがないので子供心に角袖はとてもカッコウ良いと思いました。
その印象があって、戦後、大人になってから、着物大好き人間になりました。
私が冬になると着ている礼装用の生地ドスキン(繻子羅紗と教わりました)の角袖は、
昭和20年後半に拵えたもので、かなり古くなっていますが、冬は暖かく便利して居ます。
今でも碌な着物は持っていませんが、当時は尚のこと、今でも安着物のボロ隠しに持ってこい
の防寒コートでした。
注1. | 「二重回し」とは19世紀半ば欧米で盛んに着用された、丈が長い、ケープ付きのコート(インバネス)が、明治時代、日本風にアレンジされ、和服用に裾が長くなった外套のこと。 |
注2. | 「角袖」とは着物用の外套のこと。 袖が着物のように袂(たもと)になっていて、 前はボタンまたは紐止めになっている。 |