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突然のお知らせですが・・・
弊店で扱っている丸大豆醤油を作っている醸造所が、本年(2007年)5月31日をもって廃業しました。予告を受けたのは昨年(2006年)12月。当時、製造途中の丸大豆醤油を青田買いしまして、できる限りの数量を確保してあります。具体的には、昨年のペースでお買上げいただくとすれば、9月中頃までは、なんとか丸大豆醤油と本がえしの販売を続けられると考えております。
弊店で販売している丸大豆醤油は、静岡県の榛原郡吉田町(焼津の隣町)にある『静岡共同醤油株式会社』が醸造しています。『共同醤油』という名前から想像がつくかとは存じますが、この会社は昭和51年、静岡県の志太・榛原地区の地場の醤油屋さん7軒の共同出資により生まれました。日本アルプスの伏流水が流れ込む大井川周辺には、その良質な水を利用した醤油醸造業が古くから地場産業として栄えておりました。
しかしながら、高度成長期に、大手醤油メーカーがマーケットを牛耳るようになると、価格競争力を持たない地場の醤油屋さんの経営が苦しくなり、打開策として、共同で醤油を醸造する工場を建てて、価格競争力の強化を図ったのであります。
このような経緯で設立された共同醤油さんが生醤油を造り、出資者である地場の醤油屋さんは、共同醤油さんから仕入れたその生醤油を火入れ(醤油の保存性を高めるため、加熱をして殺菌や酵素の働きを止める工程)し、製品化します。単に醤油を販売するだけでは、どうしても大手メーカーさんのブランドに負けてしまうので(その当時は、ローカルの醤油を評価してくれる消費者様が今ほどいませんでしたので)、地場の醤油屋さんは、共同醤油さんで作った醤油をそのまま販売するだけでなく、タレ、めんつゆ等々に加工して販売することで生き残りを図りました。
このように醤油屋から液体調味料メーカーに転身することで活路を見いだした地場の醤油屋さんですが、長い歴史をもつ醸造家としての信念は持ち続けたようで、共同醤油さんでは安い原料から短期間で造る現代風のコスト重視の醤油だけでなく、国産の丸大豆と小麦を使い、2年余りの歳月をかけて熟成させた『昔ながらの丸大豆醤油』の製造も、細々ではありますが、続けていたのであります。
私が、その『昔ながらの丸大豆醤油』と出会ったのは、今から10年前、1997年の3月です。取引先である焼津の鰹節製造家の紹介で、同じ焼津市内にあるヤマキン醤油さん(共同醤油の出資者)の工場を訪ねた折りに味見をさせていただきました。当時の我が家はキッコーマンさんの丸大豆醤油を使っていたのですが、共同醤油さんの丸大豆醤油をなめただけで、違いがハッキリと分かりました。普段使っている醤油に比べ、明らかにまろやかで、甘みすら感じました。工場長さんに、その違いの理由を訊ねると、「昔ながらの製法で、丸大豆から約2年もの歳月をかけて、じっくりと大豆の風味を引き出すから、角がとれ、まろやかで旨味の多い醤油に仕上がる」と教えていただいたのであります。丁度その頃、通信販売事業の立ち上げを真剣に考えておりましたので、早速、ヤマキン醤油さんに通販開業時の取引をお願いしました。
かくして、共同醤油さんが作った生醤油をヤマキン醤油さんが火入れして「丸大豆醤油」に、そして、その丸大豆醤油に味醂と砂糖を加えた「本がえし」をヤマキン醤油さんに製造していただき、1998年11月より現在(2007年)まで弊店にて販売をしております。
共同醤油さんの廃業の原因は、よくある話ですが、業績不振です。長引く不況で、出資者である地場の醤油屋さん7社の内2社がすでに廃業。残りの5社で廃業した2社分の販売量をカバーする事は難しく、また、2年間もの時間をかけてのんびり造る丸大豆醤油も、コスト面で大きく足を引っ張ったようです。結果、老朽化した設備に永続的な投資を出来る程の利益が確保できず、廃業に至ったのであります。
『真っ当な食材』を作る製造家は、意外と報われません。なぜなら、『真っ当な食材』を適正に評価して購入していただける消費者様が、まだまだ少ないからです。ですから、『真っ当な食材』を作るだけでは、工場を維持する事は困難です。今回の共同醤油さんの話が典型的な例であります。しっかりと利益を上げて工場を維持できる経営力、これが『真っ当な食材』を作る続けるためには必要不可欠だと、改めて思い知らされた次第です。余談ですが、先月から扱いを始めた『米の酢(二年熟成)』を作っている広島のセンナリさんの経営基盤は大変にしっかりしれています。センナリさんであれば、『真っ当なお酢』を造り続けることができると信じて取引をお願いした次第です。
さて、共同醤油さんの丸大豆醤油を売り切った後の話ですが、現在、ヤマキンさんにお願いして
(1)国産の丸大豆、国産の小麦を原料にしている
(2)昔ながらの製法で2年間かけて醸造している
(3)まろやかで旨味が多い醤油
この3条件を満たす『真っ当な丸大豆醤油』を探しているのですが・・・正直な話、苦戦しています。『2年醸造』この条件を満たす丸大豆醤油は本当に数少ない。多く場合、醸造期間は長くても1年。たとえ2年醸造の醤油があっても、小規模な醤油屋さんが造っているので、弊店向けに頒けていただく程の量が出来ない場合が多い。何とか、10月、遅くとも11月には新しい丸大豆醤油と本がえしをご紹介したいとは思っておりますが・・・予定は未定、醤油の手当がまったくつかない状況も考えられます。先に挙げた3条件を満たすような丸大豆醤油をご存じであれば、ぜひぜひ、情報をお寄せいただきたく存じます。宜しくお願い申し上げます。
築地仲卸 | 伏高 | 三代目店主 |
追伸: |
お陰様で、新しい醤油の供給元との取引のメドがつきました。 現在、10月中旬の販売再開に向けて準備をしております。恐れ入りますが、 今しばらくお待ちいただけますよう、宜しくお願い申し上げます。 |
お陰様で、2007年10月より
丸大豆醤油と本がえしの販売を再開しております