鰹節の伏高トップページ > 伏高コラム/レシピ > 鰹節屋のつぶやき > 素麺の製造工程
淡路島の素麺製造家は
ビックリするほど働き者だった
『お願い 極細麺は大量生産できませんので
積極的な 拡販はご遠慮下さいますようお願いします』
2003年5月、淡路島の素麺製造家さんから、こんなお願いされてしまいました。
取引を始める当初から、
ただでさえ製造に手間がかかる極細麺、その上、極細麺を作ることができる職人が
少なくなってしまい供給は先細りの一途
とは、聞いていましたが、
まさか『拡販はご遠慮下さい』なんてお願いされるほどとは・・・
さすがの私も、真面目に「極細麺絶滅の危機」の不安にかられてしまいました。
そんな訳で、状況を自分の目で確かめようと、今年の一月に淡路島を訪れ、極細麺の製造現場で丸一日を過ごしました。
ホント、現場は長時間労働もいいところ。その上、仕事中は絶えず体を動かしているのだから、とても若い職人が育ちそうにはありません。
百聞は一見に如かず、淡路島の素麺製造、密着レポートをご覧ください。
取材協力:佐藤製麺所様
|
|
小麦粉、塩、節を溶かした水を混ぜて、機械で練る
水の量は小麦粉の半分、塩は水の6%
「節(ふし)」とは、手延べの際に竹にかけられている部分で、曲がっていて製品にならない素麺の事
この節の部分を溶かした水で小麦粉を練ると麺の延びが良くなる |
|
|
練った生地を足で踏む
踏み続けて、生地が自然にふわっとしてくれば終了のサイン
コシの強い麺に仕上げるため、「踏み」の作業は2回行う |
|
|
ナタの様な形をした包丁で、生地を渦巻き状に切る
|
|
|
生地を板状に延ばしてから、筒のように丸めて太い紐のような形にする
この段階で丸めるので、出来上がりの素麺の芯に小さな穴が開いている
この作業は、機械を用いて2度行う |
|
|
太い紐状となった生地に綿実油を塗る
|
|
|
「油返し」した生地をリールを通しながら細くする
ここでも、油をうっすらと塗る |
|
|
さらに細いリールに通して、さらに細くする
最終的に「極太のうどん」程度の細さになったら、下準備は終了 |
|
|
翌朝まで8時間程度、生地を寝かせて熟せさせる
|
|
|
熟成した麺を2本の竹の棒に八の字にかけて、手延べの前準備をする
この作業は機械を利用して、2本の竹の棒に、それぞれ、約100回麺をかける
|
|
|
さあ、ここからが正真正銘「手作業だけによる手延べ」の開始
気温、湿度、生地の状態を見ながら、手で竹の棒を徐々に引き、麺を延ばす
この段階では50~60センチまで延ばすが、麺が自力で縮み4センチくらいまで戻る
|
|
|
もう一度、今度は1.2~1.3メートルまで手で延ばす
延ばし終えたら、麺を乾かさぬように框に入れ、1時間寝かせて熟成させる
なお、熟成の間に麺は縮み1メートル程度までに戻る
|
|
|
麺を寝かせている間が朝食の時間
|
|
|
この段階で、2.3メートル程度まで麺を手で延ばし、箸を使い麺をさばいて、くっついている麺を離れさせる
「手延べ」を終えた麺を機(はた)にかけて、屋外で乾燥させる
|
|
|
作業場の片づけ、次の作業の準備をしながら、麺の乾燥を待つ
ある程度乾燥した段階で、干してある麺の一番下の部分(下の竹の棒のあたり)
を切り離す |
|
|
30分程度のお昼休憩の後、乾燥した麺を19センチに裁断する
折れている麺、太すぎる麺、くっついている麺を取り除く
こうして麺を選別したら、結束、箱詰めして素麺の出来上がり
|
|
|
素麺が出来上がったら、時計の針はもうすでに午後一時。
再び、素麺作りが始まる |
早い話が、朝の2時(真夜中ですね)に仕事が始まり、夕方の6時までびっちり仕事。
途中の休憩は朝ご飯に1時間、お昼時に30分程度の休みが取れるか取れないか、
この2回だけ。冬場の製造シーズン、3~4ヶ月間はこのペースで毎日仕事です。
さすがに、これでは働き過ぎと云うことで、数年前から、月に一度、第三日曜日だけは休業しようと
の申し合わせが出来たそうですから・・・淡路島の素麺製造家はビックリする程の働き者です。
これでは、若い方々が喜んで素麺作りをするとは、とてもじゃないが思えない。
もっとも、年間4ヶ月だけ死に物狂いで働くが、後の8ヶ月は寝て暮らせれば、
若い職人も育つのでしょうが、素麺製造だけで生活するこは不可能らしい。
男衆は春から秋にかけて漁師として海の上で働いています。
淡路島でも他の産地のように、「機械による手延べ」を行い、夜中の作業をなくせば、
若い職人も育つのでしょうが、それでは、きっとあの極細麺は作れません。
遅かれ早かれ、淡路島の極細素麺は入手困難な「幻の素麺」になってしまうのだろうと
切々と感じた次第です。
思い起こせば、八年前、生まれて初めて淡路の
極細素麺
を食べました。一口食べた瞬間、
その細さ、コシ、食感、喉ごしに驚き、そして、感動し、「今まで食べていた素麺は、
素麺ではなく単なる細いうどんだったに違いない」と思った事を鮮明に覚えています。
やっぱり、「幻の素麺」なんかにしたくはありません。
|