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きちんと蕎麦の味のする乾麺作りプロジェクト

パート2

 

中野

「 我ながら荒唐無稽というか、非常識というか、

  ほんと難しいお願いをしているとは思うのですが・・・ 」

 

製麺屋の専務

「 いやー、そんな事はないですよ

 

 もう頭の中に、いくつか方法が浮かんできてますが

 そうは言っても、簡単な話じゃなさそうです

 

 でも、なんかアドレナリンが湧き上がってきて

 久々に闘志が燃え始めてる感じですよ

 

 ご期待に添えないかもしれませんが

 なんとか工夫して『きちんと蕎麦の味がする乾麺』を作ってみますので・・・ 」

 

中野

「 ありがとうございます

 それでは試作品の到着を待ってますので宜しくお願いします 」

 

2010年2月2日、製麺屋さんの専務さんと、こんな会話を長野駅前で交わした後

 『今度は大丈夫かも・・・』との期待を胸に、私は東京に戻りました。

 

と、唐突な書き出しで、何がなんだか分かりませんよね。すいません。

 

そこで、時計の針を約一年前に戻します。 

 

2009年4月 『きちんと蕎麦の味がする乾麺作りプロジェクトを始めました』 と、

私はホームページ上で宣言しました。

 

詳しくは、こちらのページをご覧ください。

 

このプロジェクト、私の中では2008年秋から始まっておりました。

 

2008年12月、最初に乾麺作りをお願いした製麺屋さんから試作品が届いたのですが、残念ながら、私のイメージとは、ほど遠かった。 麺を乾燥させる段階で、どうしても蕎麦の風味が飛んでしまうので 『きちんと蕎麦の味がする乾麺』なんて、そもそも無理な話かも とは思い始めたものの 「 もしかすると世の中には、蕎麦の味がする乾麺が存在するかも 」 との漠然とした期待もあり 「 ここは、お客様に情報を寄せていただこう 」 と思い立ち、2009年4月、ホームページとメールでプロジェクトを公言したのであります。

 

情報をお寄せいただいたお客様、ありがとうございました。

この場を借りて、あらためて御礼申し上げます。

 

実はその後、2回目の試作品が届いたのですが、それもダメ。仕方なく、ツテを辿って埼玉県の製麺屋さんを紹介していただき「きちんと蕎麦の味がする乾麺を作ってください」とお願いしたのでありますが・・・半年待っても試作品は届かない。梨のつぶて状態になってしまったのです。

 

2010年秋、試食のために買った乾麺は、だいぶ少なくなりましたが、私の部屋には、いまだ段ボール一箱分の乾麺があります

さて、お客様から教えていただいた乾麺、そして、私がネットをうろついて見つけた旨そうに見える乾麺、これらを片っ端から買い込みまして、食べてみました。 よせばいいのに、一種類について最低でも5袋は買ってしまうので家中が乾麺だらけになりまして、カミさんには文句は言われる始末。

 

そんな肩身の狭い思いをしつつも、ようやく「 蕎麦の味がする乾麺 」を発見したのであります。

 

その乾麺を作っているメーカーに電話をして 「売ってください」と頼めば良いのかもしれませんが 全く知らないメーカーさんです。飛び込みでお願いして、簡単に取引が成立するとは思えない。 それに、私の性格がヒネてるせいだと思うのですがどうせなら、発見した乾麺よりも、多少なりとも蕎麦の味が強い乾麺を売りたいじゃーありませんか。 そこで、発見した乾麺を参考に より旨い乾麺を作ってくれそうな製麺屋さんを 探すことにしたのであります。

 

参考にする乾麺の原材料は蕎麦粉100%なんですよ。

 

私が調べた範囲では、蕎麦粉だけで乾麺を作る技術をもっている製麺屋さんは長野県にしか存在しない。 また、最初に麺作りをお願いした長野の製麺屋さんから、蕎麦粉だけで乾麺を作る場合、蕎麦を製粉する際に特殊な加工をするので、その時点で蕎麦の風味が飛んでしまう、と聞いていたので、そのあたりを補う 相当な技術力を持っている製麺屋さんを探さねばなりません。

 

鰹節の事であれば、簡単に情報が集まるのですが、門外漢の乾麺ですから、この作業は難航しました。 半年以上経って、ようやく長野県で一番の技術力があり、そして 研究熱心との定評がある製麺屋さんを紹介していただくことができました。

 

2010年2月2日、参考とする乾麺を持って長野の製麺屋さんを訪問し、今までの経緯を話し、『 きちんと蕎麦の味がする乾麺作りプロジェクト 』 への協力をお願いしたのであります。

 

製麺屋さんの専務さん、紹介者から聞いていたように、課題が難しければば難しいほどワクワクするタイプの方でした。 参考にして欲しい乾麺を差し上げると、やおら袋を開けて 麺を一本取り出すと、そのまま口に入れるんですよ。 どうやらプロは、そのまま食べることから研究が始まるらしい。

 

「 うーん、確かに蕎麦の味がしますね 」

 

と呟きながら、何やら考えている。

 

そして

 

「 ご要望は分かりました いくつか試作をしますので、時間をください

 何とか出来そうな感じがしてますから・・・ 」

 

と、心強いお返事を頂き、無事、打ち合わせは終了です。

 

昼食をご馳走になり、善光寺さんにお参りした後、長野駅前で冒頭の会話を交わして、

東京に戻ったのであります。

 

それから1ヶ月後、長野から待望の試作品が到着しました。

 

届いた試作品ですが、見た目は、発見した乾麺に似ています。

そして、その乾麺を一本、そのまま口に入れて食べると 確かに蕎麦の味がする。

 

期待を膨らませながら、自宅で茹でて試食をしたのですが・・・

 

蕎麦の味はするのですが、残念ながら、かなり弱い。

 

 

食感は良いので、麺としては参考にした乾麺より上出来なんでしょう。 でも、その麺を食べた多くの人が 「あっ、蕎麦の味がする!!!」って驚くほどのインパクトはありません。

 

もっとも、直後に、普通の乾麺の蕎麦を食べたら 試作品は明らかに蕎麦の味がしたのですが

実際に弊店が売るとなると・・・

 

わざわざ食べ比べて 評価をしてくださる方は皆無に近いでしょうから

やっぱり、その試作品はダメですよね。

 

実は、私の体調が悪かったので蕎麦の味がしなかったのかも、

と思い (かなりの二日酔いだったので)

二週間後に、体調を整え再チャレンジしたんですが、結果は同じだった。

 

翌日、長野に電話をして試食の結果を正直に伝えると

 

「 うんーん、そうですか

 

 実は、参考にしてくださいといただいた乾麺の情報を同業者に

 あたって集めようとしたのですが 誰が作っているのか、まったく分からないんですよ

 

 100%蕎麦粉の乾麺を作っている製麺業者は日本でも長野県だけ、

 それも3社しかないハズなんですが・・・

 

 麺を乾燥させる過程で、水分が抜ける際に、どうしても蕎麦の風味は

 飛んでしまいますから、これ以上は難しいかもしれません 」

 

と、弱気な反応が返ってきた。

 

実は試食した際、比較のために参考にする乾麺も一緒に茹でて食べました。

普通の茹で方で食べ比べた後に、実験的に、両者とも水に10分ほど浸してから

茹でてみようと思い段取りをしたのですが、たまたま30分も水に漬けてしまった。

 

すると、試作品は水を吸いきってデレデレになり、まったく味がしない麺になってしまったのですが

参考にする麺は、あまり水が浸透せず、まだ蕎麦の味がしているのです。

 

このあたりに秘密があるかと思って 製麺屋さんに伝えると

 

「 普通、蕎麦粉だけなら30分も水に漬けると

  蕎麦は水溶性タンパクですから、水の中に流れ出てしまうんですよ

 

  それが水を吸わないで、麺がしっかりしているとなると

  蕎麦粉100%じゃなくて、何かしら入っている可能性がありますね

 

  まあ、表示をする義務がない場合もありますから・・・ 」

 

と、ちょっとだけ光明がみえてきました。

 

「 私は100%蕎麦粉に固執している訳じゃありません

 

 とにかく蕎麦の味を感じられるのが第一なんです

 

 ヘンな物でなければ原料に何を使っても問題ありません

 きちんと表示をすれば言い訳ですから

 

 食感も二の次で良いので、もう一度 チャレンジしていただけないでしょうか? 」

 

とお願いすると

 

「 分かりました 御社のニーズにあうような乾麺、もう一度作ってみます 」

 

と仰っていただいたのであります。

 

かくして、またもや試作品待ちの状況なんですが 『 きちんと蕎麦の味がする乾麺 』 果たして、販売まで漕ぎ着けることが出来るか否か???

 

正直な話、確率的には、あまり高くなさそうですが もう少し悪あがきをしてみます。

築地仲卸 伏高 三代目店主 中野 克彦

パート3へ続く

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