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キクラゲは、やっぱりキノコの仲間だった

 

熊本産きくらげ

「伏高さん、国産キクラゲの扱いを始めたんですが、もし良ければ売っていただけないでしょうか?」

 

 今年(2009年)の3月、乾椎茸の仕入先から電話がかかってきました。今年の春には『きちんと蕎麦の味がする乾麺』を販売しようと動いていたのですが、満足できる乾麺が出来上がらず、新商品のメドが立たず困っていた所だったので、ある意味、渡りに舟だったのですが・・・国産なら何でも言い訳ではありません。

 

「今時だから、中国産じゃなくて国産のキクラゲを求める人も沢山いると思うけど、ウチのお客さんは、『国産なら何でも良い』なんて思うほど、単純じゃないですよ。やっぱり、国産の方が中国産に比べて、旨くなきゃダメですよ」と返事をすると、

 

「それではサンプルを送りますから、先ずは味をみてください」と言うことになりました。

 

左は中国産、右が国産

 3日後、熊本産のキクラゲが到着。早速、自宅に持ち帰り試食です。せっかくなのでスーパーで中国産のキクラゲも購入し、同時に戻して、国産と中国産を比べながら試食することにしました(写真左は中国産、右が国産)。

 

左は中国産、右が国産

 キクラゲを袋から出すと、国産の方が明らかに大きいし、色が茶色がかっています(写真左は中国産、右が国産)。

 

左は中国産、右が国産

 約30分、水で戻して、再び見比べます。まずは戻し汁の色の違いにビックリ。中国産は無色透明ですが、国産は赤みがかっている(写真左は中国産、右が国産)。

 

左は中国産、右が国産

 キクラゲを水から取り出すと、その大きさの違いに改めて驚いた。国産は直径10センチ近いモノもあり、中国産の3倍以上の大きさです。色の違いも歴然としてきまして、中国産は黒に近いのですが、国産は褐色に近い(写真左は中国産、右が国産)。

 

左は中国産、右が国産
気候の変化に対応すべく、国産のキクラゲ菌に改良が加えられ、結果として、最近では戻し汁に色が付きにくくなっております。現在販売している弊店のキクラゲの戻し汁が画像のような色になるまで、一晩程度かかってしまいます。

 一体全体、この見た目の違いは何だろう??? と思いながら、炒めて試食です。まずは中国産。口に入れると、いつものプリプリの食感、そしてこれまた、いつもの様に無味無臭。まさに、食感を楽しむだけの食材であります(写真左は中国産、右は国産)。

 

 次に国産を口に入れました。国産の方が肉厚なだけに、よりプリプリしています。そして、何より驚いたのがその風味、口から鼻にかけて、ふぁーっとキノコの香りが広がったんですよ。『キクラゲも、やっぱりキノコの仲間だった』と再認識した瞬間でした。

 

 中国産と熊本産のあまりの違い、特に風味の違いに驚いて、早速、「キクラゲって無味無臭の食材だと思ってたんだけど、なんで熊本産はキノコの香りがするの?」と仕入先の乾椎茸問屋さんに質問しました。ところが、仕入先も乾キクラゲについてはそれほど詳しくありません。製造家に聞いてもらったのですが、「確かにキノコの香りはするけれど、中国産と何がどう違うか、ハッキリとした事は分からない」との答えが返ってきました。

 

 そこで、自分で少々調べてみると、熊本産のキクラゲは、アラゲキクラゲと呼ばれる南方系のキクラゲで、スーパーで買ったキクラゲは北方系のキクラゲだったようです。つまり、同じキクラゲでも種類があるようです。もっとも、中国産アラゲキクラゲも世間に出回っているようでして、熊本産の風味の違いがキクラゲの種類の違いだけに起因するのかどうか分からないのが正直な所です。

 

熊本産きくらげ  さて、キノコの風味が楽しめる『熊本産きくらげ』、中国産とのあまりの違いに驚いたので、弊店で取り扱うことにいたしました。

 

 私同様、『キクラゲは無味無臭で食感だけを楽しむモノ』との思い込みを持ってらっしゃるのであれば、ぜひ一度お試しください。よろしくお願い申し上げます。

築地仲卸 伏高 三代目店主 中野 克彦

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