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築地の風景
by 築地本店店長、黒川春男
2011 年10 月21 日
先月最後の日曜日、ウォーキング再開。熱中症に怯え、引き籠もっていたので、下腹もリバウンド。皇居へ。地震で剥がれた大手門の白壁が、台風でさらに剥がれている。
いつものルートで東御苑を歩く。苑内のあちこちで倒木、枝が折れたまま、多少は片付けられているが、落ちた小枝で歩き難い。「宮内庁、予算削られてんのか?」「馬鹿ねぇ、あの計画停電に合わせて、東電が停電を見送った日でさえも、皇居で電気を切った両陛下ですもの、倹約に決まっているわよ」。
一周して大手門から外へ。真ん前に、ほぼ完成した23階建てパレスホテル。客室の窓は南を向いて、皇居を直接見られない様な配置にみえるが、こんな御時世、スナイパーがいつ何時、皇居を標的にするやもと、大いに疑問あり。大手町は、超高層ビルが次々出現して、ここはマンハッタンかと見粉える。丸の内オアゾを抜けて東京駅丸の内口に。いまだ大規模改築工事中でフェンスやシートで覆われている。しかし上を見上げるとシートが上から、真新しい丸屋根が顔をのぞかせている。創建当時の姿に(二階建から三階建に)改築するとは聞いていたが、異国のモスクの様なデザイン。早く全体を見てみたい。駅舎前の広場から皇居の森に真っ直ぐ延びる百メートル近い幅の行幸通りも完成していた。開け放れた空間が心地良い。
東京フォーラムに向かう。ドイツレストランのレバンテでランチ。ワインも安くてデキャンタを奮発。ほろ酔い機嫌で銀座松屋へ。柳宗悦展が開催。展覧会を見るというより、会場に併設された手仕事直売場に行きたかった。全国から集められた陶磁器、鉄製品、木工品、和紙、ガラス製品、漆工芸、竹細工等々、盛り沢山。3.11以降、部屋を片付けプチ断捨離してたら出て来た「全国百貨店共通商品券 一万五千円也」。これを早く使わねばと乗り込んだのだ。
この予算内で、めぼしい品を探す。二枚の皿が気に入り、購入とレジへ。かなりの人が並ぶ。皆様、お召物も身につけた小物もセンスが良くて品がいい。場違いな空間に迷い込んだ心細さ。持参した商品券は、かなり古く染みで汚れている。自分の番になり、思わず現金で払う。払った後で、そっと係員に「これ使えます?」と商品券を見せると、「ええ」とあっさり。「馬鹿ねぇ!!」とエレベーターで小言を言われる。日に何度も「馬鹿ねぇ」と連発されても、前歯と一緒に意気地も欠けた私は、「ふぁーい」と空気のもれる音を返すしかない。