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築地の風景
by 築地本店店長、黒川春男
2011 年7 月22 日
先日、「これって、なんか変じゃない?」とうちのやつ。平泉が世界遺産に登録されたというニュースを見てのこと。「なにが?」「だって、震災の復興をアピールしての登録なんて、後味が悪いじゃない!!」そう言われて「よかった!!」と振り上げた手を降ろした。
平泉の登録決定の発表の翌日、岩手銀河プラザに行った。なんと、平泉関連商品が詰まった限定五十個の福袋、千五百円の貼り紙。しかし、その上に売切御礼の文字。一足遅かった。買いそびれた恨みで言うのではないが、岩手県関連商品を買う事が本当に困っている被災者の助けになるのか、と疑問が湧いてくる。宮城県銘菓(萩の月)が日本全国津々浦々の東北応援フェアで売れまくっているとのニュース。商売繁盛でほくほくなのは、このお菓子屋さんとデパートだけなんじゃない? まあ、そんな事はどうでもいい。思いは、まばゆいばかりに黄金色に輝く、中世の平泉に飛ぶ。
平安期、気仙沼、陸前高田、大船渡など陸奥(岩手、宮城)の北上川河畔で、すさまじい砂金が産生した。このゴールドラッシュがジバング(黄金島)として欧州まで知られた。このうなる様な黄金を元手に、奥州藤原氏三代が辺境の地、平泉に、京に匹敵する楼閣ひしめく都市を造り上げた。初代、藤原清衡の都市設計のコンセプトが、世界遺産登録のテーマでもある「平泉、仏国土(浄土)を表す、建築と庭園」だった。
国家、貴族のための宗教から、現世では報われぬ武士、庶民の間に、来世、西方極楽浄土に住生し、成仏する浄土信仰が拡がった。特に、この地奥州で、869年に発生した東北を壊滅状態に陥れた貞観大地震に対して、何ら有効な手立てを講じなかった朝廷に失望して、浄土教、阿弥陀仏に救いを求めた事で、俄然普及したという。
何とまあ、現政権と生き写しな事か。無為無策のまま、復興を地方に丸投げする姿が。このタイミングでの世界遺産登録は、この政府への痛烈な皮肉なのかとも思えてくる。いつの世になっても、為政者と庶民の間には、深い溝が横たわる。心の内で静かに阿弥陀様に問いかけるしかないのか。