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築地の風景
by 築地本店店長、黒川春男
2010 年7 月23 日
先月二十五日、早朝四時丁度に、遠藤のフリーキックした球がデンマークゴールに突き刺さって2対0となる。築地に出勤する時間が迫るが、テレビに釘付け。ハーフタイムに入り、後ろ髪を引かれる思いで重い腰を上げる。留守電に入った注文をノートに書き留めるが、やはり少ない。サッカーと雨には、御手上げだと仰ってたお客様を思い出す。
ゲーム後半が気になり、家に電話。丁度、デンマークのフリーキックの瞬間だった。「川島はじいた!! アアッ入っちゃった!!」ガックリ。しばらくして二度目の電話。「岡崎が一点追加して3対1で勝ったよ!!」と叫ぶ声に、安堵する。岡ちゃん頑張ったね。マスコミに叩かれて、いつも泣きそうな顔付きの監督をなめていた私、手のひらを返して土下座します。
正直に言えば、私は、JリーグのTV中継など一度も見た事はありません。正真正銘のにわかサッカーファンなのだ。しかし、日の丸を背負ったワールドカップとなると、俄然、ヒートアップする。二点目を上げた遠藤と呼び捨てにしたが、WCが始めるまで、遠藤って誰? 他のメンバーも名前と顔が結びつかない。伏高の従業員一同もサッカーに関しては、ずぶの素人だった。
数ヶ月前、伏高の通信販売部が築地から隣町に移った。新しく借りた事務所のビルの最上階に住む板長さんが、突然、築地の店に来店。横浜に和食の店を新規オープンするので御取引きしたいと仰るのだ。階下に引っ越してきたのが鰹節屋だと知り、これも何かの縁かと思うのでと仰る。こちらも嬉しいやら恐縮するやら。その時、「和食 遠藤」の名刺を頂き、お付き合いが始まった。
しばらくしてWCが始まり、横浜関内の遠藤さん、WCに出てるんだって、という怪情報が。インターネットで検索して驚く。WC出場のあの遠藤さんは弟さんで、その兄さん(元横浜マリノス選手)が経営されている店だった。ぐっと身近に感じた遠藤選手のフリーキックは、よけい嬉しかった。
そして今日、パラグアイ戦が終わった。死闘の末のPK戦で勝利の女神にへそを曲げられた。ハラハラドキドキが終わり、にわかファンは普通のおじさんに戻る。