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築地の風景
by 築地本店店長、黒川春男
2009 年9 月18 日
さる8月11日の早朝、私は東京駅に居た。社員交代での夏休みを取って帰省しようと。その日は台風8号が関東に迫っていた。東海道新幹線が風雨で運行停止になる前に、始発に乗り換えようと、朝5時には、みどりの窓口の前に着いたが、営業時間は5時半からだった。
所在なく、駅の外へ出た、その時だった。 地面が揺れた。「地震だ!」と思ったが、近くにいる工事関係者は泰然とした様子。東京駅は全面リニューアル中でパネルに覆われている。なんだ工事の揺れかと一人で笑った。窓口に戻り列に並ぶと、隣の老婦人の携帯電話が鳴り、電話に出るや大声で、「何ですって、静岡で震度6の地震ですって!」と叫ぶ。やっぱり、さっきのは地震だったのか、やばい。窓口は開き、始発の切符に変更したが、案の定、出発は遅れると釘をさされた。
始発の博多行きのぞみ1号は、そのまま2時間ホームを動かなかった。やがて「線路保守点検が終わりました。品川駅発の先行車両が出発次第、発車します」との車両アナウンスが終わるや否や、ホームでは人々が死にもの狂いで、先頭の自由席を目指して走る。やがて私の指定車両の通路も人で溢れ立錐の余地もない。
動き始めたのぞみは、ひたすら遅れた時間を取り戻そうと直走る。しかし三島駅を過ぎたあたりから、がくんと速度が落ちて自転車並み。窓の外には、黄色い安全服を着た保線区の人達が路肩で見送る。浜松を過ぎるとスピードは回復したが、京都に8時11分着ののぞみ1号が京都に着いたのは11時を過ぎていた。
ホームから駆け下りると、改札口は人の群れ。駅員に乗り継ぎのスーパーはくと号の切符を見せて、どうしたらいいかと訊くと、「スーパーはくとは運行中止です。東京に引き返した方がいい」とつれない返事。実はスーパーはくとは、途中、兵庫県作田駅を通る。その作田駅は、2日前の集中豪雨で泥に埋まり、線路もズタズタになっていた。しかし土砂災害にあった四カ所の駅をバス代替輸送でつなぎ、何とか運行するとホームページで確認したのに。
その駅員に「岡山で特急八雲に乗り換えは?」と訊くと「そっちは大丈夫」と。慌ててエスカレーターを駈け昇ると丁度、ホームにのぞみ3号が滑り込んできた。岡山駅で新幹線特急券に払い戻しのスタンプを押してもらい、特急八雲で米子へ。米子から特急スーパーおきに乗り継ぎ、三時半近くに倉吉に辿り着いた。天変地異に引っかき廻された、とんだ帰省となった。