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黒川 春男

築地の風景

by 築地本店店長、黒川春男

2009 05 22

世界大不況で来日外国人が激減した筈なのに、築地には、相変わらず観光団がやって来る。欧米人も東洋人も。もちろん日本人も。

 

競り場見学は、観光客のマナー違反続出で、一時、見学中止となった。しかし東京オリンピックをめざす東京都としては、外国人拒否はマイナスイメージだと思ったのか、又、再開した。

 

競り場に限らず狭い仲卸でも、水族館よろしく「こんな魚みたことない!!」とキャッキャッと歓声を上げ、ノロノロ歩く観光客は、買い出し人達には迷惑千万な話だ。

 

そんな観光客をツアーガイドする会社が登場。お寿司の昼飯がついて一人一万円とか、四千八百円ってのもある様だ。人の褌で相撲を取って、結構な実入りとは。

 

場内に入る観光客の主な目的は、場内にある飲食店(特に寿司屋さん)。場内飲食店全三十九店舗がインターネット上で『築地市場ぐるめ』を発信しているが、その来場注意書きは、ベビーカー、スーツケース、キャリーバッグ等をお持ちになって来られない様に。小さなお子様をお断りする店もありますとか。

 

特に驚いたのは、御食事の注文は、人数分一人一人前の注文をして下さいとある。実際、伏高に買い物にいらした御婦人から、場内の飲食店で一人前を注文して三人で食べていた外国人を目撃したと聴いた。『一杯のかけそば』でもあるまいし。金がないのではなく、常識が無いのだ。しかし、ついに目の前で黒ネコも、その現場を目撃。

 

隣の海鮮丼屋さんの店前の路上のテーブルに五人の中国人観光客が席につく。すぐさま場内で買ってきた生モノをテーブルの上に広げる。マグロ、ホタテ。ウニ。トリガイ、イカ、白身の魚。皆で食べ始めた。食っては写真。立ったり座ったりと落ち着かない。

 

やがて注文の海鮮丼がやって来た。たった一杯だけ。持ち込みもマナー違反なのに、五人で一品とは。その上、醤油のおかわり、お茶のおかわりと図々しい。一言注意と思ったが、他人が口出しする事でもない。最後に店の看板の上にフルーツトマトの箱をのせ、一同が撮影会。全くのやりたい放題。

 

デジカメやカメラ付き携帯が普及してから、飲食店内で、あたりかまわず写真をとる輩がふえた。なにか浅ましい。ブログに載せたいのか、玩具に夢中なのか知らないが、料理を落ち着いて楽しんでいるとは、とても思えない。

 

ハンドルを握るとスピード狂に豹変するがごとく、カメラを握ると人格が壊れる人もいる。黒ネコは、我が家の猫の成長をカメラに撮りたいが、デジカメを手にすると、常識を外しそうで、今もって買う勇気がない。

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