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築地の風景
by 築地本店店長、黒川春男
2008 年11 月21 日
芸術の秋です。何故、秋限定なのかは、不明ながら、抜ける様な青空に誘われて、美術展をやってる上野の森へと参りました。先ずは、本日の目玉、フェルメール展へ。
公園奥の東京都美術館に向かいます。開館直後の九時半を狙って。しかも。今日は市場の休みの水曜日。よもや混んでいまいと思いきや、入場券売り場には、すでに黒山の人だかり。世界で三十数点しか現存しないフェルメールの作品の中から、七点を掻き集め、同時展示するのは、前代未聞、空前絶後とのキャッチコピーが功を奏したのか、とにかく大盛況。
大昔も昔、若かりし頃、小田実の著作「何でもみてやろう」に夢中になり、貧乏旅行をしていた途中、アムステルダムの国立美術館でフェルメールに出会ったんです。たちまち惚れ込んだ私は、数年前に映画にもなった名作「真珠の耳飾りの少女」を求めて、デン・ハーグの美術館まで、のこのこ出掛けましたっけ。あの「少女」に再び会えるのなら、長い行列も厭わないのだけれどなどと、年甲斐もなく、にやけた言い訳をみつけ予定変更。
何やら物足りなくて、国立博物館へ。大琳派展をやってました。さすが大の字がつくだけに、光悦、宗達、光琳、抱一、其一とお馴染みの国宝が勢揃い。それはそれは、美事と溜息の連続。しかし、御馳走責めは、程が過ぎれば胃にもたれます。会場に入る前に、光琳がデザインした虎屋の羊羹を思い出した。売っていた若い娘に「後で、買うからね」と約束したのを。
外に出ると、突然の俄雨。本当に女心と秋の空。隣接する東洋館の屋外カフェへ走る。胃もたれを忘れて、黒ネコは無料の東洋館に。驚いた。大琳派展をやっている平成館の人混みが嘘の様に、誰もいない。その上、警備する人もいない。だだっ広い空間を一人進む。
展示品は、骨董好きならヨダレを垂らす名品ばかり。こんな無防備で大丈夫なのかと心配しつつ、ヘップバーンの映画「おしゃれ泥棒」のシーンが頭をよぎる。よからぬ誘惑を振り切る様に小走りして外へ。何故かホッとした。
たまには高尚の真似事でもと出掛けたが、所詮は俗人。駆けてばかりで、足の痛みだけが残る。しかし徒労に終わろうと、しばしの間、外界を覆う不況の暗雲を忘れる場でもありました。