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築地の風景
by 築地本店店長、黒川春男
2008 年7 月18 日
新鮮なイカが手に入ったので、さっと焙ってレモンを絞る。マヨネーズなんて以っての外。イカ、タコなら毎日でも喰らいたい。そんなイカモノ食いの私に、大ピンチなのだ、先日のイカ釣り船の全国一斉休漁だ。
闇の日本海に発光するイカ釣船をよく見かけたが、あの集魚灯が油をジャブジャブ喰っていたとは。やっと水揚げしても赤字じゃ、働く気は失せる。二日間の休漁で、イカの値は1.5倍になったそうだが、当日のスーパーには、品切れどころか、普段より多い程。定置網漁のイカが不足分を補ったらしい。
油の値段が更に上昇していけば、漁民の廃業が増え、生イカがなくなる。輸入物の冷凍イカで済むとは早計に失する。皮なしのイカリングなんか、全く食う気がしない。輸入に頼れば、農産物同様、生殺与奪の権を外国に握られる。油代で円を巻き上げられ、食い物代で巻き上げられ、その上、仕事も巻き上げられ、踏んだり蹴ったりだ。政治屋に頭脳がない限り、一庶民の私は、先細りする国内産の魚を、余すところなく利用して自衛するしかない。
イカの下足だの魚のアラだの、食べ方が判らず値の安い魚なぞを探し廻ります。それにしても、昔はタダ同然だったアラは、今は立派な値がついています。金目や鯛のアラは人間様用に、タラのアラは猫用に、食ったことのなかったカワハギの皮を恐る恐る剥き、調理することを覚えました。
とにかく、市場から日本の魚が消えない限り、額に汗することなく、油に投機し、穀物に投機して、濡れ手に粟で儲けた人間が、三ツ星レストランで舌鼓を打つ姿を尻目に懸けつつ戦い続けるぞ!!と、風車に向かって挑む、ドンキホーテの心境になるのです。