鰹節の伏高トップページ伏高コラム/レシピ築地の風景

黒川 春男

築地の風景

by 築地本店店長、黒川春男

2007 20

田舎から御中元に醤油セットが送られてきた。箱を開けると、だし醤油、サラダ醤油、精進だし醤油の紙パックともろみのチューブが二本入っていた。だし醤油を鰹節屋の黒ネコに送ってくるとは、ちと嫌みと思ったが、有り難く頂戴した。製造元は、四国讃岐坂出で創業二百年の老舗醤油屋さんだった。醤油といえば、キッコーマン、ヤマサ位しか頭に浮かばない私には(鳥取ではヒガシマルだった)香川県の醤油は初耳だった。

 

ところで、もらった精進だし醤油の中身は、昆布と椎茸から取ったダシに七種類の野菜のスープを加えた100%ベジタリアンだし醤油とある。よく考えてみれば、精進料理は、日本古来の立派なベジタリアン料理だったのです。

 

巷では、野菜中心主義の料理店が流行っているそうですが、「不殺生戒」の教えから肉食を断つ精進料理とは違い、また、健康だからというだけの理由でもなく、実はある事情がありそうです。

 

伏高の馴染みの若い(三十歳)の板前さんが独立して、新富町に自分の店をオープンさせました。その挨拶にみえた折りに仰ってました。安全面で問題のある肉や、漁獲制限の網が次々と種々に広がり高値安定した魚をメニューのメインにすると、手軽な料金で料理を提供できないと。もちろん野菜の奥深さに惚れ、コースの主役たりえると確信したからだそうですが。

 

この方は、伏高の別製削りが気に入り、修行中ながら、毎回自腹を切って購入されてたんですが、これからは野菜の持ち味を生かすために昆布中心のダシを引きたいから、鰹節の注文は減るのでスイマセンと頭を下げられました。私は、まずその卒直さに驚き、野菜に対する情熱に感動させられ、これまで以上に応援したいと思いました。

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