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黒川 春男

築地の風景

by 築地本店店長、黒川春男

2007 23

三日前、朝起きると、のどがヒリヒリする。昨日からは、鼻水がとろりと垂れ始めた。・・・と、ここまで書いて、「いや待てよ。去年も、風邪ネタを書いたぞ」と気が付いた。まあいいかと思ったとたん、また鼻水が原稿用紙の上へ落ちた。慌ててティッシュでぬぐう。食卓の上はまるめたティッシュだらけだ。

 

「風邪を引きやすいのは、ヘビースモーカーだからよ」と言われたのを思い出した。たぶん、いや、きっと当たっている。「煙草一・二本でも大量のビタミンCが破壊されるんだから。風邪を治すのも予防するのも、ビタミンCをいっぱい取らなきゃ駄目よ」とも言われた。黒ネコは、果物も生野菜も、ちょっと苦手だ。やっぱり煙草をやめるしかないか。

 

以前、店に支払いにみえたお客様に、「まだ、そんな事、やってんの」と、煙草を吸っている現場を押さえられて、黒ネコ「ヘ・ヘ・ヘ」と笑って誤魔化した。「俺はやめたよ。スパッと。絶対禁煙に成功する方法を教えてあげようか。それは、職場の仲間に宣言するんだ。禁煙を破ったら、皆に五万円づつ払うって・・・俺はそうやってやめたから」と軽く言われた。「五人、否、六人x五万円は・・・ひえっ・・・無理、無理、絶対無理・・・」と、ケチな黒ネコは聞かなかった事にした。

 

ところで、築地は先週から、中国人客がやたらに多くなった。本土系か台湾系か判らないが、ハイ・テンションの大音声は中国人だと思って間違いない。昔、上海のカラオケ店でボラれ、雑伎団の入場券を売るダフ屋にボラれた黒ネコは、中国人の印象は全く良くない。あれから十数年経って、今は、中国人が買物ツアーにやって来る時代への様変わりした。

 

日本人の数倍もまして買う気むんむんの中国人観光団。今は百万に満たない人数だが、そのうち一億人、十三億人とやって来たら・・・ あれっ、ペラペラと中国語で、中国人客に「消費税は、まけられません」と説得する自分の姿が見えたと思ったとたん目がさめた。原稿用紙の上に鼻水とよだれの地図。「夢か」と寝起きの一服と煙草に手を伸ばしたが、やめた。

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