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黒川 春男

築地の風景

by 築地本店店長、黒川春男

2006 23

ちょっと前、築地市場で特大サイズとはいえマイワシ一匹千二百円の値がついたそうです・庶民の魚、日常食だった鰯は、いつの間にか高級魚に格上げになってしまいました。

 

 「鰯料理専門店は大弱りでしょうね」とお客様に話すと、「ウチだって深刻だよ」とぼやかれました。なんでも、昼の焼魚定食に使う鯖の仕入値が五年前の二倍以上に跳ね上がったそうです。国産に比べ脂がのって焼いても冷めても味の良いノルウェー産の鯖、しかも輸入鯖の四分の三を占めるその鯖が急騰したんだそうです。粕漬けや味噌焼きにしても旨い赤魚や銀ダラもこれまた値上がり。

 

「どうも外国人がとり(インフルエンザ)や肉(BSE)に問題有りってんで、魚を食べ出したんだってよ。欧米、中国のバイヤーに買い負けしてるらしいよ」とお客様。「でもの、サンマだけは安いんだ。だからといってサンマ定食ばっかりでもねぇ」と、苦笑い。

 

そういえば、私の行くスーパーには、解凍と小さく書かれた、季節はずれの生サンマが『本日のおすすめ』として堂々と鮮魚コーナーを埋めている。昨年、豊漁だったサンマが、目玉商品になっている。サンマ様だけがかろうじて庶民の魚だ。

 

そんな折も折、伏高のスタッフ、松ちゃんが定期検診でコレステロール値が高いと診断された。「うわぁー、食事制限だって」と、松ちゃん、慌てふためいている。「コレステロール値の低下作用のあるイコサペンタエン酸やビタミンDを多く含んだ青味魚を食べなさい。玉子と肉は当分おあずけ」と女医さんに厳命されたそうだ。皮肉なことに、身体にいいと判った青味魚はもう高級魚になってしまいました。

 

「心配すんなよ、サンマもあるし、安い缶詰をあるじゃない」と私。我が家の台所には、鯖や鰯の水煮、味噌煮、サンマの蒲焼が常備されてます。大根と鯖缶で大根と鯖の味噌煮なんて一品も超簡単。

 

とにかく、当分、松ちゃんに焼き肉屋に連れて行けだの、ピザの出前もいいですね、だの言われなくて済みそうだ。でも、健康オタクの松ちゃん、オタクの虫に火が付いて、ますます、あれは食べられる、これは食べられないと御託を並べるに決まってる。ちょっと、うんざりかも。

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