- 信州美麻高原蔵・・・新発売です 味噌の熟成の頃合いには好みがある ただ今、お試し価格で販売中
鰹節の伏高トップページ > 伏高コラム/レシピ > 築地の風景 >
築地の風景
by 築地本店店長、黒川春男
2006 年3 月17 日
春はまだ浅きといった日々が続きます。先日、田舎から岩海苔を送ってきました。
桐の化粧箱に入った高級そうな海苔でしたが、とんと忘れていました。
ところがテレビ番組(田舎を食べよう! 決定! ふるさとグルメ大賞)で
大賞に輝いた島根の甘鯛の炊き込みご飯にこの海苔が登場。
島根県平田市の北端、日本海に突き出す十六島鼻と呼ばれる岬周辺で、「シマゴ」と呼ばれる特定の人達によって、
荒れ狂う波の中、足場の悪い岩場で海苔を指に巻き付けて摘み取っているのをレポーターが取材していました。
その映像を見ていて、ひょっとしてと戸棚を探して、桐箱のふたを開けると、「十六島のカモジ海苔」の文字。
翌日、早速、甘鯛の干物で代用した炊き込みご飯を作ってみました。十六島海苔を炊きあがった御飯に散らし、
しばらく蒸すと、えもいわれぬ香りが部屋中にたちこめてきます。
「これは旨い」とすっかり忘れていたお礼の電話を田舎の妹に。我ながら現金な奴です。
妹は笑いながら、「ほんの、お裾分けだから・・・ところで、『ばばあ鍋』って食べたことある?」
もちろん知りませんでした。
なんでも鳥取県の東部岩美町の名物料理だそうで、
地元で『ばばちゃん』と呼ぶ深海魚の鍋だそうです。冬の松葉ガニ漁の網に少量ですがかかり、
全体がぬるぬるとした、体調1メートル程のグロテスクな外観だそうです。同じ深海魚の鮟鱇をスリムにした感じです。
「白身の全然クセのない味、ひょっとして鮟鱇より美味しいかも」との妹の言葉に、
私、図々しく「送ってくれよ、その魚」妹「無理だぜ、ちょっとしか水揚げないだけえ」とつれない返事で電話を切られた。
幻の料理と聞けば余計に食べたくなる。
インターネットで調べて、岩美町の魚販売所に電話をすると「そんなもん今はあらへんが、
とれるのは2月半ばまでだがな、ハハハ」と笑われた。逃した魚が恨めしい。今年の暮れまでお預けとなった。