鰹節の伏高トップページ伏高コラム/レシピ築地の風景

黒川 春男

築地の風景

by 築地本店店長、黒川春男

2005 12 16

波除神社の大銀杏の黄色い落ち葉が風に吹き寄せられ、築地・伏高の店前の道には、 アーケードの軒下に紅白の垂れ幕が張りめぐらされて、師走の装いとなりました。

伏高では、鰹節の削り方教室がボチボチ続いています。さすがに土曜日の十時・十一時は店頭の対応に追われ、 生徒さんそっちのけで中断という場合もあります。他のスタッフが茶屋へ配達していて私一人の場合は特におおわらわです。 それでも皆さん、夢中で勝手にカシャカシャとカンナに向かっています。

そんな生徒さん達の手許を、店先で立ち止まり、じっとみつめる強い視線を感じます。 ただもの珍しいからとか、とっても興味がありそうだとか、人それぞれ、老若男女を問いません。 それに外国人もかなり興味津々といった風です。そして、お決まり通り、デジカメが向けられる。

削り器は英語で「ドライド・ボニート・シェイバー」と呼ぶそうで、鰹はボニートが一般的ですが、 スキップジャック・ツナとも呼ばれているように、外国人には鰹も鮪も同じ『ツナ』と理解しているようです。 その上、外国人に説明する日本人も『ツナ』と言う人も多いんです。 まあ、店先で売っている「血合抜削り節」はメジマグロが原料ですから『ツナ』でいいんですが・・・

今日もある英字新聞の取材を受けました。昔削った事があると言うその女性記者に、 早速、削ってもらう。

記者「私がやるとうまく削れなかったけど、母が代わると早くて、 きれいな削り節がどんどん出来て、お母さんてすごいなあと思ったものです」なにか、ほのぼのとした家庭の情景が浮かぶ。

その時、店先で眺める人々の口から「昔やったわ」「何年も食器棚の片隅で眠ってるわ」 「初めて見た、まだ削っている人がいるんだ」の声。

まるで天然記念物でも観たかの様な乾燥が飛び交うのを耳にして、俄然火がついた。

「私が代わりましょう」力を込めてカシャ、カシャ、カシャと勢いよく削る。

こんな風に生半可な指導ぶりだと痛感しながらも、とにかく皆様と一緒に 修行を重ねていくという気持ちに免じてこれからもお付き合い下さいませ。

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