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築地の風景
by 築地本店店長、黒川春男
2018 年9 月28 日
外は三十六度と体温並みの炎暑。上野東京博物館の「縄文」展へ。縄文の国宝六点が集結。猫どもが我が家に来る以前に青森の三内丸山遺跡を訪ねて、縄文が一万年以上前から植物(クリ等)を栽培してたと知り、重文の樹皮を編み込んだ「縄文ポシェット」を見て、目からウロコで縄文愛が芽生えた。
しまった!! 東博の正門のチケット売り場は、ごったがえしてる。近づくとなんと列は、売り場横から道路にはみ出し、さらにその先まで。即、退散。公園内の木陰をつたって都美術館に。こちらは混雑なし。「藤田嗣治」展。フランス、欧州で一番有名な日本人画家。最近は葛飾北斎に、その地位を奪われたそうですが。藤田の作品は日本国中の美術館に収集されてますが、今回没後五十年。史上最大級の大回顧展。海外からも作品が。
随分前に東京近代美術館蔵の「争闘(猫)」(十四匹の猫が戦う)を見て、藤田に黒ネコは嵌まった。磁器の質感を持つ「素晴らしき乳白色」の肌と細い線描で西洋の女性達、そして日本画の平面的で装飾的な背景が、外国人に受けた。黒ネコはさっぱり良さが判らない。やっぱネコと静物画は個性的で見惚れる。若くして貧困と病苦で世を去った親友モディリアーニ等が没後もてはやされ、画家生活六十年間スランプなく、経済的にも成功を収めた数少ない画家だった藤田の名声はさ程でもない。人生の皮肉。
ところで「縄文」展、くやしいので三日後の休市の水曜日、開館一番ならと、九時半に東博チケット売り場へ。とんでもない!! 東博前の大噴水広場から、大混雑が見える。道にはみ出た列は寛永寺輪王殿まで続く。もう引き下がれない。チケットブースNo1~No4までの総合文化展(常設展)は列なし。一般620円を二枚買い入場。本館右奥の平成館を目指す人混みを尻目に、正面本館に入る。二階で日本美術をたどる「なりきり美術館」開催中。一番最初が、縄文、弥生、古墳時代の作品展示。火焔型土器、宇宙人の顔をした遮光器土偶発見。一階に平成館に続く通路脇に考古エリアがあった筈。ここで国宝土偶を数品見た事を思い出す。土偶は平成館に引っ越してましたが、重文のみみずく土偶(顔が鳥のみみづく似)のレプリカが鉄鎖につながれ台の上へ。思ったより重たい。ここに弥生、古墳時代の名品も多数。
コーヒーでもと平成館一階のパーラーへ。二階へ上がるエスカレーター前にも数十人の列。外の玄関前の簡易テントの下に数十名。土偶にたどり着くまで・・・考えるのも嫌になる。やけに年配者が多い。「冥土の土産にってわけ」とうちのやつ。ミュージアムショップで欲しかった画集二冊とうちのやつは八百善の料理レシピ本「江戸料理大全」三千五百円をいつの間に買っていた。今日から「江戸料理よ」と。また失敗作を食べさせられるのかと思うが、決して口に出せない。