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築地の風景
by 築地本店店長、黒川春男
2018 年6 月29 日
お出かけします。原稿用紙を買わなきゃ。皇居の帰りに伊東屋に寄る事に。皇居に向かう途中、東京駅前広場を通る。長らく工事中だったが、全面改装され、行幸通りと同じ御影石で舗装。白く開放的な空間と駅舎の赤レンガが見事なコントラスト。その片隅に八メートルの高さの銅像が。日本鉄道の父、井上勝の名が刻まれたプレートが。以前から誰なのか気にかかっていた。この前日のNHKのテレビ番組で判明。
明治初頭、日本の欧米化こそ日本の未来を決めると、まず鉄道だと、大隈重信と伊藤博文が反対する西郷隆盛と大久保利通らを退けるため、明治天皇の懐刀岩倉具視と直談判。大隈の切り札は、伊藤、井上馨らと幕末に英国へ密航した長州ファイブの一人、井上勝とイギリス公使パークス。鉄道の重要性を知り、ロンドン大学で鉄道工学を学んだ井上がイギリスの好意的資金援助の申し出たパークスの通訳しつつ、熱弁をふうる。岩倉頷き、即断。数日後に鉄道敷設の大号令。
新橋と横浜間に日本初の鉄道が開設される。天皇の行幸なる。一両目は近衛兵、二両目に天皇と井上勝(解説係)二人だけ。三両目に政府高官と各国公使ら。大隈と西郷は隣り合わせに座る。苦虫を噛み潰した表情の西郷と大隈のニンヤリ顔はさぞや見ものだったでしょう。井上勝、その後、自ら現場に立ってスコップ片手に全国へ鉄道を広げて行く。
皇居に向かう前に、うちのやつが何処からか探し出した文庫本をふと手に取る。「剣客商売、包丁ごよみ 池波正太郎、料理近藤文夫」とある。晴海から東京駅南口行きのバスの中で読みふける。終点に近づくも気がつかぬ程。久しぶりの皇居。最近、大手門の入場口で手荷物検査が始められた。本一冊入った薄いショルダバックでも長い列に並びます。しかし、入場無料は有難い。
入場者の大半は外国人。大手門の中柱に片足を上げてスマホする中国人、係員に注意されたいた。皇居のこの時節の見物は、二の丸池の脇の菖蒲田。ハナショウブ百種以上が一斉に開花してます。その周りの苑路沿いに咲くサツキの紅が色を添えます。池に泳ぐ尾長鯉が優雅。スイレン科のコウホネの小さい黄色の花が可愛い。しかし池の水は濁っている。残念。武蔵野の雑木林を再現した森の中を行くと名も知らぬ花が所々にひっそりと咲いて いる。野鳥も梢を渡り、まるで別世界。天候も暑からず寒からず気分爽快この上無い。
休み明け、伏高の会計の姉さんに、近藤さん本を見せていると、なんと言う偶然なのか、銀座てんぷら近藤さん来店。背節十本御買い上げ。姉さん、「近藤さん、店長がこんな本持ってきたんですけど」。「ああこの本、よく売れたんですよ。サインしましょうか」。とんでもない幸運と、近藤文夫と墨書きしてもらう。