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築地の風景
by 築地本店店長、黒川春男
2018 年3 月30 日
先月最終水曜日の休市日、ポカポカの陽気に誘われて上野へ。東京博物館(トーハク)の「仁和寺と御室派のみほとけ・天平と真言密教の名宝」特別展へ。その数日前に伏高のお客様から、「仁和寺展、行った?」と声をかけられる。「すごく混んでるみたいで、入場者、十万人を超えたんでしょう?」、「そうでもなかったよ」。ならば一番空いてそうな水曜日ならばと出かけたのだ。
上野の山は春を待ちきれない人達でわんさか溢れている。嫌な予感が的中。トーハクの切符売り場に、特別展入場一時間待ちの掲示板が。こりゃ駄目だと、少し離れた東京都美術館の「ブリューゲル展」へ。地下一階のエントランスロビーに入って、特別展入口をみると、長蛇の列。こんなに並ぶ人たちを見るのは初めて。なんでかとインフォメーションデスクの女性に尋ねると、今日はシルバーデイで、毎月第三水曜日は65歳以上の方は観覧料無料なのだとのたまう。恐るべしシルバーパワー。
その三日後の土曜日、急いで帰宅し、上野へ再挑戦。トーハク切符売場は混雑なし。難なく入場。安心した途端に、お腹がグウ。平成館入口のラウンジで鶴屋吉信の桜餅をかっ食らう。お土産に光悦満雲寿を。三階の特別展会場へと続く超長いエスカレーターを昇る。御室桜で知られる京都仁和寺。開基は宇多天皇。世界遺産に登録。門跡寺院で、歴代天皇の厚い帰依を受けたことから、優れた絵画、書跡、彫刻、工芸品が伝わると説明書き。国宝高倉天皇宸翰消息(しんかんしょうそく)など歴代天皇の数々の天皇直筆(宸翰)消息(手紙)のコーナーから始まる。墨跡は消えかかり何が書いてあるのかさっぱり。空海が唐で書写して持ち帰った経典(国宝三十帖冊子)もちんぷんかんぷん。所詮門外漢の黒ネコは、薄暗い数々の部屋をそっと通り抜ける。
やがて華やかな部屋へ。黒山の人だかり。ここは、仁和寺の観音堂内部を再現した部屋。33体の安置仏と天井、壁を高精密画像で写し出す。全員がスマホやカメラで写真を。係員がフラッシュ撮影は禁止されていますと叫ぶ。応仁の乱でことごとく焼失した仁和寺。江戸初期、覚深法親王が将軍徳川家光の援助を受け、天皇御所紫宸殿、清涼殿、常御殿等を移築して堂舎に改築。その時再建されたのがこの観音堂。圧倒の迫力。美術展はこうでなきゃ。ここから、真言宗御室派総本山仁和寺の本尊、国宝「阿弥陀如来像」、「薬師如来座像」、そして全国の御室派寺院の国宝、重要文化財の寺宝仏が綺羅星のごとく続々登場。皆何ていい顔。そして最後に真打ち大阪葛井寺(ふじいでら)の国宝、「千手観音菩薩座像」が。でかい。天平彫刻の最高傑作の一つ。優美な表情なのに、合唱した手を中心に千四十一本の大手、小手がびっしり光背のごとく広がる。突き出した大手に数々の寿宝。すべての手、指の表情が千差万別。ぽかんと魅入られ、いつの間にか合掌していた。