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築地の風景
by 築地本店店長、黒川春男
2017 年10 月27 日
今朝は最低気温十五度。毛布の中へネコどもが入って来る。衣替えで取り出してくれたパーカーを着て出勤。帰宅すると、ガスコンロの上に、ぴかぴかの鍋が、とうとうやって来た。「無水鍋」。アルミ合金製の厚手鍋。付属品の鍋つかみで持ち上げるが軽い。蓋を開けると、白菜と豚肉の蒸し煮。スパイスのタイムの枝が乗っている。一ト月程前に、うちのやつが買って来た料理本「無水鍋料理」が気にかかっていた。黒ネコの実家にも半世紀前にはあった。まったく同じデザインで懐かしい。お袋が毎日の様に「蒸しパン」を作ってくれた。卵入りの黄色いふかふかのパンを思い出す。
喜ばせてやろうと昼休憩に調理道具屋さんに向かう。世界屋と大野屋は先月の築地の火事で焼け落ちた。そうだ、あの火事場から晴海通り斜め対面にある藤井商店を思い出す。店に入り、「無水鍋有ります?」と訊くと、一番年配の人は「無水鍋」を御存知ない。そこへ若主人らしき人が、「在庫はないので、取り寄せになりますが」、「じゃそうしてください」。分厚いカタログをパラパラめくるが見当たらない。「じゃ結構です」と去る。
帰宅して、その件を話すと、「アマゾンの通販で見つけたから」。そして今日、「アマゾンはよして、合羽橋で見つけたの、あちこち探して、やっと大型店のキッチンワールドで、蒸し板付きで一万一千円。ル・クルーゼとかの輸入無加水鍋の片隅に発見したのよ」。「無水鍋」は広島県の生活春秋だけが作る登録商標品なのだ。半世紀前からあちこちで開く、生活改善料理講習会にお袋も参加して無水鍋を買ったのだ。息の長い商品なのだ。甘さ控えめの蒸しパンを作ってもらおうかな。