鰹節の伏高トップページ伏高コラム/レシピ築地の風景

黒川 春男

築地の風景

by 築地本店店長、黒川春男

2015 11 20

神田の古本まつりに行って来た。年に一度の百万冊の大バーゲン。神保町の歩道に、書店と書棚に囲まれた約五百メートルの本の回廊。毎年収穫なしなのになぜか足が向く。ぎっしり並ぶ本に目移りしっぱなし。画集のシリーズが一冊百円!! 一冊を手にするが、かなり重い。この英国風景画家の画集は初めて。しかし重い。五千円以上のお買い上げで送料無料。近くにヤマト便のブースがあるが、あきらめた。  

近くの東京古書会館へ。古今東西の貴重な古書の展示即売会。古典籍から肉筆資料、近代初版本等がびっしり並ぶ。値段は五桁、六桁は当たり前、七桁それ以上も。こういう神田の展示即売会で昨年、ドイツ哲学者ヘーゲルの自筆メモが書かれた初版本が買われ、本物と判り一億九千百四十万円の値が。会場に入る前、手荷物はすべてクロークに預け、番号札を渡される。場内には警備員も巡回する。財布の中身が心細い二人には居心地悪くなり、さっさと退散する。

ニコライ堂に向かう。靖国通りを歩いて小川町へ。そこから本郷通りを左折して御茶ノ水駅へ向かって坂を登る。途中、「ここだったんだ、笹巻けぬきすし」とうちのやつ。歩けど歩けど、ニコライ堂のドームが見えない。超高速ビルが立ちはだかる。やっと聖橋が見えた時、左手にドームの頭が。横道にそれるとニコライ堂の全景が現れた。想像してたのより一回り小さい。回りのビルがドデカすぎるのか。昔、小津安二郎の映画「麦秋」で、お茶の水の喫茶店の窓越しに、原節子が見上げるニコライ堂のデカさが黒ネコの頭に焼き付いていたからなのか? 青緑色のドームと堅牢な石造りの白い壁が、エキゾチックな空間を演出して、東京名所として希少価値あり。突然、鐘楼の鐘がグワーン、カンカン、グワーン、カンカンとテンポを上げて大気をつんざく。その迫力たるや。やがて、日曜日のミサが終わったのか、外国人が本堂から出て来た。重要文化財ながら、今も現役の正教会なのだ。

聖橋手前を右折して、転げ落ちそうな急勾配の淡路坂を下る。中央線ガード下に沿って昌平橋を過ぎ、歩き続けると赤レンガの高架橋と変わり、なにやら人だかり。旧万世橋橋駅舎がマーチエキュート神田万世橋という商業施設に生まれ変わった。カフェなど和洋中の飲食、物販店が充実。ライブラリーで旧万世橋駅のジオラマを見て驚く。初代の駅舎は、東京駅にも劣らぬ豪華な駅舎だった。東京駅が出来るまでは、この須田町界隈は、銀座と並ぶほどの繁華街だった。小腹が空く。エキュートのどの店も満杯。空いていたチャイニーズバルでビールと小皿のセットを頂き、神田駅まで歩き、電車で帰宅する。この界隈を再探検したくなった。

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