鰹節の伏高トップページ伏高コラム/レシピ築地の風景

黒川 春男

築地の風景

by 築地本店店長、黒川春男

2015 24

桜の季節となりました。日中の暖かさで、一気に満開へ進むとの予報に、先月、最終土曜日、上野公園へ突撃。大江戸線上野御徒町で降りると、まずは松坂屋のデパ地下へ向かう。花見弁当の前は大変な人だかり。屋台の焼きそばの方がいいと、うちのやつ。では公園でおつまみ調達しようと不忍池へ。  

桜は五分咲き、七分咲きとばらばらながら、めでるには十分の花の量。花見客がてんでに桜の花の写真を撮っている。国民総カメラマンの時代になって、カメラとスマホは必需品となった。写真撮るのに夢中の人々に呆れながら、二人は途中のコンビニ前の臨時売店で買った桜色の缶ビールと串焼きでささやかな花見の宴となる。

アジア系の人達も多い、近くで純白のウエディングドレスとタキシード姿のカップルを十人程の仲間が桜を背に、パシャパシャ。花見の時期を見計らって来日したのか。

弁天堂に続く池の中央の堤を渡る。桜のアーチが延々と続く。左手のボート池は、スワンボートでびっしり。右手の蓮池の蓮の群生がすっかり刈られている。そこに黒山の人だかり、皆が写真を撮っている。のぞくと数え切れないほどの鳥の群れが、カモ、ユリカモメ等。手前の生け垣には雀がうじゃうじゃ。一人のおじさんが食パンの耳がどっさり入ったビニール袋を片手に、もう一方の手を突き出す。その手のひらで鳥が啄む。ちょっと異様な光景。

したり顔のオジサンを観て思い出した。去年のことだった。これから向かう上野の山の桜木通りで、道の中央にかかる桜の枝に猫二匹がじっと横たわっていた。大勢の人がカメラに収めていたのを。ネコが勝手に登ったのではなく、おじさんが放り上げ、落ちるとまた放り上げて、見世物にしていた。「桜ネコ」としてテレビに流れた。虐待とのツイートもあった。

弁天堂に近づくと、屋台通り。人ごみでちっとも進めない。なんとか振り切って、お山へ。桜中央通りの両脇の宴は最高潮。手拍子ではやし一気飲み。東照宮の参道の屋台なら、焼きそばが食べれるだろうと向かうが、入り口はすでに待ち人で満ちている。そうだ動物園の出口近くにおでん屋さんがあった。あそこなら、いつもそこでビールを買い、椅子を借り、道脇でタバコを吸う。

「今日はビール売りきれました」という。「あっ、最後のビール二本ありました」。この東洋系のにいちゃん酔っ払ってる。「まだ陽は高いのに、商売っ気がないんじゃない」とからかう。桜と人に酔ってきた。もう潮時と下山。お腹がすいていたが、大江戸線で帰宅。

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