鰹節の伏高トップページ伏高コラム/レシピ築地の風景

黒川 春男

築地の風景

by 築地本店店長、黒川春男

2015 23

明けましておめでとう御在居ます。旧年中は、格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます。本年も、皆様の御贔屓の程、お願い申し上げます。  

大晦日、元旦と死んだように寝てました。何を食べ、何をしたのかとんと覚えてません。歳を重ねるにつれ、物忘れがひどくなってます。

これではいけないと、二日の日は、朝早くからお出かけモードに入って、朝風呂に入りコーヒーを飲むが、気がゆるんで久し振りに御神酒を頂くと、ころりと寝入っちまった。「どうするの!!」と起こされて、慌てて家を出る。

初詣では、日本橋の福徳神社と決めていた。日経新聞にのった小さなコラムを見たのだ。日本橋三越の対面、コレド室町、コレド室町2、室町3、YUITOと立て続けに出来たショッピングビル群の谷間に、この地で一千年以上の歴史を持つ福徳神社の新社殿が完成した。創建は平安時代の貞観年間で都内有数の古社だ。徳川家康公も秀忠公も参詣したこの神社は、境内で興行した富くじで大いに栄えた。が関東大震災、空襲、戦後は周囲の開発に伴って境内はどんどん縮小し、敷地を駐車場ビルにして社殿はとうとう屋上に引っ越した。この由緒ある神社。地元の有志と三井不動産がタッグを組み、にぎわいのビルの間に、「聖なる空間」として福徳神社を拡張、リニューアルさせた。

この神社に向かう途中、高島屋デパートに立ち寄る。福袋販売初日なのだ。たまたまメガネを忘れ、値札の数字がぼやける。うちのやつにいくらと聞くと、40%~50%引きなのに、とんでもない値段。それなのに群がる客は、どんどん買っていく。富裕層とはこんな人達なのか。手には買い物袋を束の様に持っている。場違いな所に入り込んだ気がして、胸くそが悪くなる。「早くここから出るぞ」と飛び出す。

福徳神社をめざす。ありました真っ赤な鳥居が。社殿は想像したより小振り。田舎の鎮守様の様。しかし出来たてピッカピッカ、陽の光があたると黄金色に輝く。参拝者も十数人。ちょっと奮発して五百円玉をお賽銭に。賽銭箱の左脇の三宝に宝くじを乗せ、そばの幸運鈴を鳴らし、お祓いし祈念すればラッキーな事が!! おみくじを引くと中吉。「迷わず今までのことをつとめればよし、常に控えめにして事をなさい吉」とある。ムカムカが消えた。機嫌を戻した黒ネコに、「単純なんだから」。大吉を引いたうちのやつに、富籤守を買ってもらう。江戸で数少ない富くじの販売を許された神社の一つですから。

人生最初に行ったデパートの福袋参りより、なにかほっこりする神社への参拝。ここらあたりが身の丈に合ったというべきか。

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