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築地の風景
by 築地本店店長、黒川春男
2014 年9 月19 日
先月、台風十一号が四国に上陸しようとした頃、黒ネコは金沢でした。夏休みを、金沢、輪島、飛騨高山を巡る旅に。脳梗塞で倒れたオヤジも、そこそこ歩けるとの事で、妹達と姪っ子に同伴してもらうことに。
新金沢駅は、2脚の木製鼓型の柱に屋根をかけた門と、その後ろに総ガラス張りのドームが包み込む、斬新な意匠に度肝を抜かれる。この門の下で、一年ぶりの再会。
やって来たが、オヤジ、よたよたして足がちょっとも進まない。「何てこった!!」、タクシーで百メートル先のホテルへ。部屋に入るなり、オヤジ爆睡。「オヤジ、旅行続けられるの?」。「今年の正月の沖縄旅行では「ホイホイ歩いてただにぃー、何でだろうか」。気分落ち込み、一同寝入る。
夜、近くの小洒落た居酒屋さんへ。個室に通され、次々と料理が運ばれてくる。白えびの天ぷら、刺身盛り、加賀野菜の天ぷら、金沢オデン等。オヤジ、「フォーク、フォーク」と叫ぶ。「箸使えないので、フォークを」と頼む。右手は固く握ったまま。持参したタオルを前垂れ代わりに、洗濯ばさみで止める。自分では手に負えないモノは、黒ネコが口元へ。オヤジ、ものすごい勢いで食ってる。特別老人ホームでは糖尿食なので、この時ぞばかりと掻っ食らう。なんだか哀れです。
翌日の金沢は、朝から雨模様。最近話題に上る、金沢二十一世紀美術館へ。どでかい円型UFOが舞い降りたかの様な形。早速、車椅子を借りる。乗せれば途端にスイスイ移動できる。しても現代アートなるもの、どうもなじめない。有名な「スイミングプール」という作品に皆を送り出し、オヤジとぼんやり待つ。やがて、外は横殴りの雨。台風の先走りがやって来た。車椅子なしでは観光は無理とホテルへ。復元した金沢城の菱櫓、五十間長屋は、ほんのすぐ先なのに、さよならと言うしか。
翌日、高速バスで輪島に。田舎道は安心とレンタカーを借りる。この旅の目的である 輪島漆芸美術館へ。芸大生の姪っ子、漆工芸の道へ進むらしい。
翌日はまた雨。朝市は、強雨で露天はパラパラ。金沢経由で飛騨高山へ。最後の高山で盛り上がりたいがオヤジの足が最悪の状態に。古い街並みの上三之町をそぞろ歩く時、とうとうギブアップ。タクシーでホテルへ。車椅子で移動出来るホテルから出られない。
テレビでは、台風が鳥取を直撃するとの報道。妹達は連泊を決め、黒ネコは、出発を朝一番に変更して、ワイドビューひだで名古屋へ。名古屋に近づくにつれ、スピードダウン。みずほへの乗り継ぎ十五分オーバー。名古屋駅は、運行再開を待つ客でごった返す。なんと予約したみずほ、三十分遅れでやって来た。無事、東京に帰れた。
数日して鳥取に電話すると、「オヤジ、利き足の指にでかい魚の目が出来とうたんだが、新調した靴も合っとらんし。旅行前から痛かったのに、旅行に出たくて、だまっとるだけー、ハハハ」。笑うに笑えない。とほほの旅行が魚の目の所為とは。しても介護は心底くたびれる。