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黒川 春男

築地の風景

by 築地本店店長、黒川春男

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水曜日の市塲の休みの日、急に思い立って、西銀座チャンスセンターで年末ジャンボ宝くじを買おうと向かう。一番窓口以外は空いていると聞いていたのに、どの売場にも長い列。警備員が最後尾の看板を振り上げている。こりゃ駄目だ。近くの有楽町駅前の売場ならと、うちのやつにせっつかれる。  

駅前の宝くじ窓口の一番には長い列。二番に並ぶ。数人なのになかなか進まない。組番号、末尾番号を細かく選んで買っている様子。うちのやつ、「こっち」と手招きしている。角を曲がると三番売場はガラガラ。連番三十枚を二セットを買う。一万八千円が消えた。ランチ代がどこかへ。

「丸善に付き合ってくれたら、お昼を奢ってあげるわよ」。「丸善発祥の早矢仕ライス?」。「来年のカレンダーを買いに行くのよ」。日本橋まで、ちと距離があるが、今日は余り歩いてないのでまあいいかと歩き始める。

銀座から日本橋エリアに点在する様々な県のアンテナショップが開店ラッシュ。これといって欲しい物はないが、道すがら、ついつい店内探索。カフェ・レストラン併設のアンテナショップが多いが、ハンバーグとかカレーとか、ジョナサンもどきのメニューで、なにか芸がない。

丸善に到着。三階のカレンダー売場へ。ここは、気の利いた外国製のカレンダーがあるので好きなのだが、今回は目ぼしい物がなかった。うちのやつはイギリス画家のカレンダーを一つ。私はゼロ。毎年、二・三点は買うのに、アート系も動物系も風景系も、なにかマンネリ化してきている。築地の弘尚堂書店さんで、二・三点カレンダーを探しましょう。

ところで昼飯時になり、サラリーマンがオフィスから流れ出てくる。取り敢えず目に入った、近くの居酒屋さんの看板の刺身に惹かれて店内へ。食べ終えて外に出る。やっぱし、同じ千円の刺身なら、昼飯にちょくちょく行く、築地の本種さんの刺身定食がピカ一だと思う。

築地の細い脇道にある。とても小奇麗とは言えぬ店。築地市場で働くあんちゃん達が仕事帰りに立ち寄り、競艇談義に花を咲かせている。店主も調理しながら、話に加わる。この市場仲間との最強タッグが、魚のネタの良さを証明している。

誰にも教えたくない店ながら、時々、伏高のお客様に、どこか教えてと言われれば、そっと教えて、後日、感謝される。年末になると、いろんな雑誌で築地が特集される。その一つの雑誌に、誰にも教えたくない店にこの店の名が、店主と娘さんの写真と共に。ありゃまあ、名が知れては、当分の間、あの店で昼飯にありつけないでしょう。残念。

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