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黒川 春男

築地の風景

by 築地本店店長、黒川春男

2013 10 18

お隣の伊勢龍さんから、ぶっとい秋刀魚をもらって食べた。焼き魚は柔らかいから、なんとなく食べられるが、垂らしたポン酢が歯にしみる。実は上の歯の一本がぐらぐらと抜け落ちそうになってきている。歯医者に行って抜くのも痛いし、その歯を抜くと部分入れ歯も作り直さなければならなくなる。固い肉や野菜を噛み砕くのには往生するが。  

歯だけならまだしも、老眼も進んで細かい字はメガネなしには、ほとんど見えなくなった。遠くの看板の文字は良く見えるのに、まさに視覚障害者。メガネをあちこち置き忘れ、レジを打ち間違える。すかさず、「メガネかけてね。メガネ、首から紐で吊るしときなさいよ!!」と会計のお姉さんの小言。

以前は、紐で吊していたが、荷物を胸元に持ち上げる度に、グシャと壊す。もう何本も御釈迦にした。

ところで、私の住む晴海にオリンピックがやって来ると決定した。自転車で五分先の晴海埠頭に、五輪選手一万七千人の宿舎、プール、陸上競技トラック、スポーツジム、ジョッギングコース等の選手村を作るそうだ。村と言っても、14階建ての宿舎ビルが24棟も建ち並び、ちょっとした団地。五輪終了後にはマンションに作りかえて売却されるとか。

五輪招致を見込んで、高層マンションの建設ラッシュが続いていた晴海だが、招致決定するや、そのマンションギャラリーに見学者が殺到しているとか。晴海、豊洲の都の所有地を買って再開発している大手不動産業者やゼネコンは笑いが止まらないだろう。五輪まで、あと七年。このエリアに数万人。五輪終了後、選手村が住宅に生まれ変われば、更に一万人以上の人口が増える事になる。コンビニだらけで、まともなスーパーがない晴海がどう変わるのか。 

晴海から銀座に出掛けるには晴海通り一本だけ。そうでなくても渋滞がひどいこの道。バスに乗るより歩いた方が速い程だ。 ともかく、五輪招致決定で築地市場の豊洲移転は拍車がかかる。平成二十八年開場へそれ行けどんどん。いつも思うのだけど、選手村が作れる程の広い晴海埠頭を移転候補地から外して、汚染された豊洲に決めたのか。何とも、きな臭い。

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