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築地の風景
by 築地本店店長、黒川春男
2013 年4 月19 日
三月3度目のお花見にでかける。桜の開花宣言したとたん、花冷えの毎日。厚着して浅草に向かう。隅田公園の吾妻橋のたもとに集合。築地伏高の隣、伊勢龍の由香ねえが、すでに来ていた。あと二人が遅れそうというので、近くの松屋の地下食品売場に駆け込む。赤ワインとなとりのおつまみを買う。と、由香ねえのスマホが鳴る。もう着いたからと。
急いで橋の脇の交番前へ。いました、お互いに見つめ合い、二人の世界にひたるカップルが。実はこの両人の結婚の報告が、今夜の花見のそもそもなのだ。新婦はタイ人のJちゃん。一週間前にバンコクからクアラルンプール経由で、エアアジアでやって来た。昨日は入管に行って在留許可を申請して来たばかりとの事。あと数ヶ月すれば、結婚ビザがもらえるとか。ともかく満開の隅田公園をそぞろ歩く。堤防の石段に腰掛け、寒空にそびえるスカイツリーをバックに、桜の花をめでながら、乾杯。
K君とJちゃんが結ばれるまでは紆余曲折を経て、やっと実を結ぶ。五年前に日本で知り合い、やがて、Jちゃんはタイに帰国。年数回、行き来する遠距離恋愛を続けた。遠距離で会えない時間を二人の気持ちで、二人の財産にして結ばれた。よくぞやったと祝ってやりたい。南国育ちのJちゃん、薄着でふるえている。飲み助ばかりなので、即ワインは空になった。さあ、予約してある由香ねえの実家、味友、伊勢龍に向かう。
やがて駒形へ入る。浅草消防署の隣が、伊勢龍さん。由香ねえの姉さんと母さんが出迎えてくれる。
私と由香ねえは赤ワイン。K君は日本酒。えっ、日本酒? 糖質ダイエットを止めていた。よく見ると一時期すっきりしていた体型がリバウンドしている。家庭料理のやさしい味付けをいただきながら、酒が進む。話は、どうしても二人の行く先。酔いが回り、次第に饒舌になる。
早口の日本語に、Jちゃん、ついていけないで黙り込む。なにか不安そうな表情。それもそうだ、お祝いの宴なのに、黒ネコ、由香ねえ、「K君、タイ語勉強した方がいいよ」、「タイ語教室に通っていた時の、俺の教科書あげるから」と言うと、「タイ語なんか覚える気なんかない。Jちゃんが日本語をもっと勉強すりゃいい」とつれない返事。場面は暗転した。「それって思いやりないんじゃないの!!」。
また、やっちまった。黒ネコと由香ねえ、御節介の虫が押さえ切れない。この五年間、こんな熱い場面を何度、繰り返した事か。
翌日、由香ねえではなく、姉さんのスマホに、「Jちゃんが口を利いてくれない」とK君から泣き言。正式な結婚前のマリッジブルーのJちゃんに、とんでもない事をしてしまったのか。悔やんでも後の祭り。
そのうち「黒さん、しばらくです。なんとか、うまくやってます。又、どこかで一杯」と言ってくれるのを待ってます。お幸せに。