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黒川 春男

築地の風景

by 築地本店店長、黒川春男

2012 23

パタパタとヘリコプターの音が騒がしい。きっと東京マラソンの取材なのだろう。近くの晴海通りを抜け、ゴールのビックサイトに向かっている最中なのか。伏高のお客様の一人が、「出場するから、応援頼むよ!!」と言われてましたが、この原稿を書き上げなくてはと、外出どころではありません。

 

気になってテレビをつける。中継の画面には、寒い外気の中をカラフルなウェアで銀座の通りを埋め尽くす三万六千人のランナー。部屋に籠もり、鼻水を啜りながら眺める。毎年この時期になると、決まって鼻風邪をひく。電気ストーブを引き寄せスチーム加湿器から蒸気を放出させても具合は、絶不調。毎年のことなので、老後は、この時期だけでも暖かい土地に避寒したい。

 

最近、豪雪の鳥取の妹達からしつこく電話がある、一族郎党でチェンマイに移住したいと。ええっ!! 二ヶ月くらいのショートステイならともかく、ロングステイビザをとって、ずっと住むなんて、ちと過激な発言です。物価が上がり続ける日本で暮らすより、老後は暖かい場所で暮らす方がいいとか、地震や原発の心配がないとか、いい事ばかりをあげつらうのだが、冬の豪雪、夏の猛暑を除けば、日本の春と秋は最高の季節だし美しい。食い物は絶品。治安も程々にいい。黒ネコがタイ語を少しかじったことがあるといっても、あちらでは所詮、他所者は他所者ですから。

 

消費税がどんどん上がれば、やってられないと、妹達は在庫の商品を一年かけて売り尽くし、後はテナントビルとして他人に貸すと決めた。海外移住だなんて事を真剣に考えなくてはいけない程、日本の未来に黒雲がおおってきた。

 

ところで、黒ネコの好きな女優の一人、メリル・ストリープが「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」でオスカー(主演女優賞)を取りました。76年にIMFに支援を受ける程落ちこぼれた英国は、ギリシャの今に似た状態だった。英国病と言われた経済の再生を、家族を犠牲にして政治に邁進した鉄の女がサッチャーだった。サッチャーの意志はライバルの労働党のブレアが受け継ぎ、英国病克服宣言が発せられる。今なぜサッチャーが主人公の映画なのか。日本の国会議員全員が映画を見てくれと思う。どうです、チャーチルの真似する野田さん、日本病を退治できますか?

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