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黒川 春男

築地の風景

 

 

 

by 築地本店店長、黒川春男

 

 

20111118

 

築地の伏高の右隣の海鮮丼屋さんは廃業してしまった。ずっと休業中だったのですが、とうとう。伏高の左隣四軒先のよせもの屋さんも廃業。その後にイタリアンという噂が二ヶ月前に流れた。しかし一向に工事の気配がない。夜の波除通りは、伏高の真向かいの24時間営業の寿司屋さんだけ。夜間住民も少なく、ほぼ暗闇。こんな場所に、二の足を踏んだのかと、皆がひそひそ。

 

ところが、十月に入って猛スピードで大改造が始まった。あれよ、あれよという内に、昭和の佇まいの残る商店街、ターレと軽トラが行き交い、観光バスでやって来た観光団がのし歩く波除通りに、南国のリゾートにある様なライトブルーにペイントされた、洒落たカフェ風レストラン「ロ・スコーリオ」が出現。なんでも地中海料理店らしい。店頭に次々と並ぶお祝いの花スタンド、オリーブの木の鉢。あふれんばかり。

 

波除通りの女番長の異名を持つ伏高の左隣の伊勢龍の由香ねぇが、この異変を見逃す筈はなく、ポン酢屋のグルメマンと私を従えて、グランドオープンの二日後の昼二時過ぎに、乗り込む。

 

外観同様、店内も地中海ブルーが基調。天井とテーブル、イスは頑丈な木製。壁に掛かる本店「ロ・スコーリオ」の写真。南イタリア、アマルフィ海岸の崖に建つ桟橋付きのレストランにセレブ達が、クルーザーでやって来るそうだ。

 

三時過ぎまでランチタイム。アラカルトはやめて、ランチメニューの三品とサラダを追加。席に着くなり由香ねぇ、「暑いから窓を開けてくれない?」。観音開きの木製の窓を開ければ、地中海ならぬ、市場の駐輪場。卓上のコップの花、「食べられないから、そっちにやって」、「あなたに任せるから白ワインを一本、持ってきて、おいしいやつよ」。恐れをなしたギャルソンは、その日以後、毎日、出勤の度に、挨拶するとか。男を躾けるのは、最初が肝心だとか。なるほど。

 

 

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