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黒川 春男

築地の風景

 

 

 

by 築地本店店長、黒川春男

 

 

201120

 

田舎から防災グッズ詰め合わせを送ってきた。非常用持ち出しリュックにすべてを詰めるとかなり重い。こんな重い物を持って逃げ切れるのか、かえって不安になる。これは使えると思ったのは、ライト付きラジオ。FM放送が聞ける。3.11の翌日、築地の電器店に慌てて行って買ったラジオはAMのみで、雑音が多い。

 

久し振りにTVを消してラジオに耳を傾ける。そのうち、聞き慣れた曲が流れてきた。昔、夢中だったサイモンとガーファンクルの「明日にかける橋」。カラオケで歌える洋楽の数少ない一曲。じわっと身体中に暖かい血が駆け巡る。翌日。ウォーキングの途中でBOOK−OFFに寄り、S&GのCDを買う。唯メロディーが好きで歌っていたのだが、訳詞を改めて読むと

 

君が疲れてしょげているなら、瞳に涙が

溢れているなら、僕がふいてあげる。

君の側にいるんだ、辛いときだって、 友達がいなくても。

荒れた海に架かる橋の様に、僕が体を横たえるから。

 

あの日以降、映画も音楽もテレビドラマもバラエティーも、身体が受け付けなかった。心ここにあらずなのだから。やっと歌に心満たされた。暗闇に佇む被災者の姿が頭に浮かぶ。思わずにじむ涙に、我ながら戸惑った。

 

最近、私は、せっせと昼休みに自転車で東銀座の岩手銀河プラザに向かう。岩手県のアンテナショップだ。3.11の数日後、店に向かった。店頭で岩手県出身の大学生達が義援金を集めをしていた。内に入って驚いた。商品が半分もない。節電で暗い店内は侘びしさが一層増す。買うつもりもなかった三陸海宝漬を買って店外へ。おつりの札を「がんばって」と募金箱へ。全員の「有り難う御座います!!」の声が背中に届く。つらかった。その後も何度か通うが、その度に客が増え、商品も少しづつ増える。

 

大勢が応援している その日は、岩手県紫波(しわ)町フェアをやっていた。紫波ワインの試飲ともちもち牛コロッケ、キッシュなどを販売。もちろん赤ワインとコロッケを買う。その日のプラザの玄関前には、みちのくプロレスの面々が募金中だった。ユニークな覆面の一団にちょいとひるむが、募金。「有り難う御座います」の声が野太い。

 

信号待ちをしていても、地面が揺れている感覚。あの日以来、一層酒量が増えたからか。応援したいからと自分に言い訳して、また、赤ワインを買いに行こう。銀河プラザに。

 

 

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