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黒川 春男

築地の風景

 

 

 

by 築地本店店長、黒川春男

 

 

201022

 

明けましておめでとう御座居ます。今年も「築地の風景」を、どうぞご贔屓お願い申し上げます。

 

ようやくの正月休み、一人暮らす父を想えば、賑やかな正月をと今年も鳥取へ。天気予報では山陰は暴風雪とか。新幹線、智頭急行と乗り継ぎ、一路北上する。岡山県大原までは穏やかな小春日和。更に北上して中国山地の鳥取県との県境の志戸坂トンネルを抜けたとたん、車外は白一色と変わった。

 

横殴りの雪は倉吉に着いてもまだ止まぬ。3〜40センチは積もったか。倉吉駅から妹の家に直行する。二世帯で食事、暖房は不経済。雪道の往復は手間。何より家族一緒がにぎやかだとの言葉に甘えて、父ともどもやっかいになる事にした。

 

いつも通り、元旦は朝から飲んで食って、箱根駅伝に熱狂し、やがて酔いが廻れば、こたつでゴロ寝して終わる。二日目、あれ程吹雪いていた雪は治まり、昼近く、道路には黒い地肌が現れた。なんとか行けると、もう一人の妹の家族も合流して総勢九名が二台の四駆で皆生温泉に出発した。

 

妹がインターネットで予約したのはベイサイドスクエア皆生ホテル。宿泊費は黒ネコが持つから旅館にしてくれと言ったが、「正月料金は、一人二万円から三万円、松葉ガニコースはもう一万円上乗せされるだぜ」と一蹴される。素泊まり一人八千円にしては、このホテルは外観も内装も高級感がある。部屋も広く、フカフカのベッド、窓際に畳の小上がり、掘りごたつ付き。なにより、仲居さんが出入りしないのが気楽だ。

 

男風呂も広くて、階段を上がれば、日本海を見渡せる露天風呂。真っ暗な海に沖の波除けブロックに激しくぶつかり、高く舞い散る白い波しぶきが浮かぶ。ドドーンと身体を震わす音が恐ろしくなり、再び屋内の大浴場へ。口に含むと塩辛い。海岸の浅瀬に湧き出す熱湯を漁師が発見したのが百年前だという。

 

元旦三日目。朝早くホテルを出発して初詣に向かう。去年の出雲大社は渋滞に懲り懲りした。今年は美保神社に参る。皆生から弓ヶ浜半島を北上。境港を過ぎ、境水道大橋を渡ると島根県。島根半島を東に海沿いの道を進むと迫る山に囲まれたわずかな土地に家屋が密集した漁村に着く。美保関港だ。港の上を何十羽の海鳥とトンビが乱舞する。岸壁脇の狭い駐車場に何とかすべり込む。

 

神社に向かう道沿いに天日干しのスルメの簾が寒風にゆれる。ごみごみした道を抜け参道に入ると、屋台で焼くスルメの醤油の香りが漂う。生唾を飲み込み奥へ。手水舎で身を清めて神門をくぐり抜けると、こんな片田舎にそぐわない立派な拝殿とその背後に相似した二棟の本殿が並ぶ。

 

御神酒を頂き、おみくじを引く。末吉だった。神の声は「思うままにならずいらだちを憶える黒川よ、焦らず自信と希望を持ってすすめ。やがて好転のきっかけに出会うから」。なにやら今の日本の姿とだぶる。一歩先を見つめて着実に進めと続く。肝に銘じた。

 

 

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