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黒川 春男

築地の風景

 

 

 

by 築地本店店長、黒川春男

 

 

200919

 

それは突然やってきた。悪魔の一撃と言うらしい。二時間のウォーキングから帰り、しばらく午睡した後、「ご飯よ」の声に起き上がろうとした時だった。「うおっ!!」と一声あげたきり、その場に這いつくばったまま動けなくなった。ああーギックリ腰だ。慌てて、ゴムベルトと湿布薬を探してもらうが、以前やったのは五年ほど前なので、何処か行方不明。仕方ないのでバスタオルを巻き、幅広の革ベルトでギュッと締める。死んだ海老状態でその日は寝た。

 

翌朝、ゆっくり起き上がろうとして激痛が走る。中々立てない。四つん這いで床の上を進む。朝一番にやるコーヒーの湯を沸かすのさえ、普段の数倍の時間がかかる。二足歩行で両手の自由を獲得したのが人間にとってどんなに進化だったかと、足元にすり寄ってくる猫をみて思う。こんな要介護状態で自転車に乗って出勤出来るのかと途方にくれる。刻々と出勤の時間が迫る。朝風呂に入って腰を暖めてみればと思いつき、恐る恐る入湯。

 

しばらく浸った後、熱めのシャワーで腰を集中的に暖めると、何となく痛みがやわらいだ気がした。珍獣なまけもの状態の超スローペースで服を着て、最後の難関が靴下だ。悪戦苦闘、足の親指と人差し指で挟んでやっとこさ履く。額に脂汗がにじむ。その時思わず咳をする。「ぐわっ!! いてぇー」

 

要介護二日目。伏高にみえたお客様が私がギックリ腰だと聞くや否や、市販の腰ベルトより晒しが良いと、「いやいや、とんでもない。結構です」の言葉を振り切り、さっさと買ってこられた。有無も言わせず店の奥へ行き、パンツをずり下げ、「腹を思いっきりへこませて」と言うと、晒しを三周り締め上げられた。いつも辛口で冗談も言えない方だったが、今日は天使の輪がみえる。「一週間ずっとつけてなさい」と言って、格好良く去っていった。

 

要介護三日目、改善したものの、椅子に座っていると痛みがぶり返すので、腹ばいになってこの文章を書いている。もちろん晒しをつけて。

 

 

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