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黒川 春男

築地の風景

 

 

 

by 築地本店店長、黒川春男

 

 

200822

 

伏高のお隣さん伊勢龍の看板娘ゆかちゃんが、お母さん、お姉さんと浅草駒形の実家を改築して居酒屋を開店しました。初日の混雑を避けて二日目にうかがいました。店名もスバリ『伊勢龍 味友』。客席十二席のこじんまりとした店ですが、まあ、なんとも内装、外装ともに凝ってます。京都・先斗町にあってもおかしくない程。

 

それもその筈、改築を請け負った棟梁は、築地伏高の斜め向かいの海鮮ひつまぶし屋さんを手掛けた本人です。赤いラーメンの暖簾がなければ通り過ぎてしまいそうだった元の店が、屋根をおおうテントから、木の外壁すべて黒一色のお洒落な店へとビフォーアフターした。この棟梁の職人技に惚れ込み、ゆかちゃんのお母さんが依頼したという訳だ。

 

 しかし、名人には困った職人気質が。納得がいく材木や資材にこだわり、みるみる予算オーバーに。冷や冷やするお母さん、諸々の心労も重なり、げっそり痩せてしまいました。しかし開店の日、カウンターの中で満ち足りた表情のお母さんを見て、ホットひと安心。

 

そして店内をチェック。店内の壁はすべて、黄緑色の聚楽壁で統一され、腰板、ドア、床のカリン材の板張りもすべて柿渋で厚く塗られ、落ち着いた和の空間で満杯です。 和のしつらえこそ、ほっと肩の力が抜け、なごみの時をすごせる。

 

私は日本家屋、とくに古民家を改築して、終の住み処と考えているのですが、そのイメージの源泉は、小津安二郎監督の映画に登場する日本の家です。特に『麦秋』のエンディング、長女の結婚、長男の医院の開業で老夫婦は北鎌倉から、耳成山を望む大和の田舎へ移り住むのだが、その古民家が頭から離れないのだ。

 

その家の静謐な部屋の囲炉裏に並んで座る老夫婦が、波を打つ麦畑の中を歩くお嫁さんを見ながら

 

祖父  「みんな、離ればなれになってしまたけど、

           私たちはいい方だ」

 

祖母  「いろんな事があって、長いあいだ」

 

祖父  「うん、欲を言えばきりがない」

 

祖母  「ええ、でも本当に幸せでした」

 

人生の最後をこんな台詞でエンディングさせたいと思うのです。

 

 

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