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黒川 春男

築地の風景

 

 

 

by 築地本店店長、黒川春男

 

 

200722

 

 

三社祭の余熱が残っている浅草に出掛けた。久し振りの浅草はなにか違う。街が明るくなった。風呂上がりのこざっぱりした感じとでもいった風。外国人客のひしめく、仲見世通りをひやかし歩く。一昔前の、日本人なら気恥ずかしくなる様なキンキラの着物や小間物は影を潜めて、品揃えが粋で渋い和趣味に代わった様な気がする。

 

浅草に出掛けたのは、そこから隅田川を渡った本所にある、友人がその友人に薦められたという居酒屋さんに行こうとタクシーに飛び乗ったものの、開店三十分前に着いてしまい、時間つぶしをするためだ。かれこれ小一時間して本所に戻り、居酒屋さんのの格子戸を開けると、奥の小上がりにお客さんが数名。手前の椅子席とカウンター席は空いていた。席に着くやいなや、次から次へと来客。あっという間に全席が埋まり、「満席です」と断られる人が続く。

 

生ビールで乾杯して、塩ゆでの桜海老をつまむ。やがて刺盛りがきて、〆鯖を口に入れると口の中で溶けた。こんな〆鯖、食べた事がない。生野菜には味噌。水ナスをかじると甘い。ナスは果物だったと再確認。わくわくしながら次の注文を考えるこの瞬間が一番楽しい。黒板には、春一色の魚、野菜のお品書きが並ぶ。しかもお手頃な値段。三十品目以上の品書き。次々と売り切れましたとチョークで横棒が引かれていく。

 

次々と入るオーダーを、てきぱきこなす女将さん。キリリッと真剣勝負の面構え。お愛想や色香でサービスなど、みじんもない。戦艦の司令塔から指揮する艦長の風格。見ていて惚れ惚れする。居酒屋さんだから、色々なお客さんが居る。「○○ちゃん」と店の娘を呼ぶ、お馴染みさん扱いして欲しい客。携帯電話を耳から離さず、ひそひそ話しをしている男性客二人。かなり胡散臭い。くりひろられる人間模様をちらっとにらみながら、「駄目よ、おいたしちゃ」と無言でコントロールする女将さん。段々居心地は良くなっていったが、入口で待っているお客さんが気になり腰を上げた。この店ならちょくちょく行きたいと思うが、なにしろ不便な立地。我が家の近所にマイ居酒屋さんが欲しくなった。

 

 

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