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黒川 春男

築地の風景

 

 

 

by 築地本店店長、黒川春男

 

 

201722

 

 残暑お見舞い申し上げます。セミの声は消え、朝夕に虫の鳴き声が聞こえ始め、むくげの花が満開になっても、秋はまだだま先。  

先月のお盆過ぎに夏休みをもらい、鳥取に帰省した。一時入院した父親と一年ぶりの再開。妹達に世話を丸投げしている身としては、一年に一度位は帰らねば。ベッドで眠るおやじ。顔の色つやも良く元気そうだ。妹が「お兄いだぜ」と手を握ると、眼を開けてニヤリとする。岡山のオバチャンに線香あげに行くから。今年の初め、おやじの姉が亡くなったが、私は葬儀に行けなかった。伯母の家に行き、新盆に間に合わなかったので贈り物の盆提灯はやめ、お線香と果物を仏壇前に。しばらく思い出話に花を咲かせる。 ここ岡山は酷暑、外気温は三十八度。妹二人と姪っ子は久々の外出。ちょっと足を延ばして、広島県福山市の鞆の浦へ。山陽道を西に向かい、福山東インターから南下。大きな吊り橋を渡ると田舎道。やがて左に瀬戸内海が広がる。船溜まりに漁船が停泊。いよいよ鞆の町へ。

今日泊まる景勝館漣亭の前は工事中。近くの信用金庫の狭い駐車場に一時停車。小型車で良かった。対向車が来ると路肩に寄せなければならない程の道幅。ホテルに行き、駐車場を訊くと、四百メートル離れているとか。ここで荷物を下ろしてチェックイン。三階の渡り廊下を渡り別館へ。そんな広くはないが気持ちのいい和室。テラスにかけ流しの内風呂がある。こりゃ最高とガラス戸を開けると熱風が。そうでなくとも暑いのに熱湯が温度を押し上げる。ならばと本館六階の大浴場へ。広くはないが、先客は一名。ほとんど貸切り。外に木造の舟風呂が。まずは身の汗を洗い流そうと桶を取り、風呂いすに座った途端にひっくり返る。手首をガツンとぶつける。外の露天風呂につかると、目の前に仙酔島と弁天島、その向こうに瀬戸内海が広がり、点々と島も。そこへ、おあつらえむきに「いろは丸(坂本竜馬の持ち舟を再現)」がゆっくりと仙酔島へ向かう。夕暮れの海が一幅の絵になる景色。

夕食。本館二階の個室へ。食前酒、前菜、刺身、焜炉(なべ)、替り鉢(チョイス)、冷やし鉢、酢の物、食事(十種の品とお茶漬け)、香の物、デザート。魚大好きな私は大満足。だが、飲み過ぎだからとビール一杯だけ。「大浴場は温泉成分ですべり易くなっていると貼り紙あっただらーに。だらだなー」と手首を摩る私を笑う。 浴衣姿で夜の町へ。まずは鞆の浦のシンボル常夜燈へ。道筋に保命酒の看板があちこち。酒の文字が気になる。シャッター通りぽかった街が常夜燈に近づくにつれ、裕福だったろう商家の街並みに変わる。その先で、ドローンで撮影する外国人達。構わず進む。睨んでやると、「ソーリー」の言葉。床につくが、外の掛け流しのお湯の音が煩い。

築地勤めのならいで、朝四時に目覚める。皆は爆睡中。朝風呂へ。女湯と男湯が入れ替わっている。今朝の風呂は露天風呂はたる風呂。朝の風景も絶景でした。そっと着替え、早朝の鞆の浦を散歩。北へ進むが、間口が狭く奥の長い長屋風の建物がびっしり。年代物。あちこちの店先で、年配のおばさんが魚を捌いている。小魚が多い。名物の味醂干しを作ってるのか。脇道の奥に立派な神社。その前の通りは寺ばかり。もう体力の限界とホテルへ。部屋では女三人が足湯の真っ最中。魚尽くしの朝食を食べて、岡山へ。

途中、倉敷に寄るが、大原美術館はパス。三井アウトレットパークへ直行。何十店も立ち寄り、岡山へ。「岡山城と後楽園は?」との私の提案はパス。「暑いだけぇ」。ホテルグランビアにチェックインするやまたも、すぐ側のイオンモールへ。黒ネコ、ホテルで待つうちに寝込む。朝食バイキングを腹一杯食べ、鳥取へ。最後のお願いと国宝吉備津神社へ。重厚感たっぷり、四百米の回廊も見事。霊験あらたかなお守りを父親に届け、旅は終わる。

 

 

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