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黒川 春男

築地の風景

 

 

 

by 築地本店店長、黒川春男

 

 

201420

 

先月十四日の朝、外は一面の銀世界。自転車での通勤を諦めて、徒歩で。まさかこんなに積もっているとは。歩道はともかく、アスファルトは水たまり。とうとうスニーカーは水深10センチの氷水の中。ようやく築地に到着。コンビニに飛び込む。濡れた靴下を買い換えようと売場に。その棚は空っぽ、完売してた。店に着き乾いたタオルを足下に巻き、長靴を借りた。東京に来て、長靴を初めて買わなきゃと思った。  

店の前で次々とターレがスリップして立ち往生。皆が諦めて荷を歩いて運ぶが、配送会社も車がなく、荷を持ったまま引き返してくる。たった三十センチの雪でこんなパニックになるとは。案の定、経験したことのない最悪の営業日となった。 羽生君が金メダルを取り、ソチオリンピックも終盤戦になった頃、いつもの朝飯を東都グリルで食べていると、隣のおじさん達の会話が。「真央ちゃんが金メダル取れるかどうかで、仲間で賭けたんだ。もちろん、取れない方に。大事なときに転ぶんだから」と、あの森じいさんと同じ事を言っていた。

女子フィギュアのショートプログラムの早朝当日、真央ちゃんは最終滑走者。四時二十分には出勤の私は、全部見たかたったのだが、最初のジャンプで転び、次のジャンプでも失敗。呆然とする真央ちゃんの顔が見てられず、家を飛び出す。十六位だと後で知る。翌日のフリー演技は見る気もせず、ただニュースを見ようとスイッチオン。女子フィギュアの生放送が。なんと真央ちゃん暫定一位。しばらくして真央ちゃんのフリー再現映像が。最初のトリプルアクセルを決め、次々とジャンプ。エイトトリプルを決め完璧な演技。昨日の演技が別人の様。演技を終え、大粒の涙を流しながらの笑顔に黒ネコももらい泣き。一人騒ぐ黒ネコの声を聞き、起きた来たうちのやつ、「泣いてる場合じゃないでしょ、出勤時間でしょうに」と尻をたたかれる。

仕事から帰ると、真央ちゃんのニュースばかり。何度見ても鳥肌が立つ。ソチオリンピックの最高のヒロインになったと思う。ありがとう。心折れず、なにくそと立ち向かった真央ちゃん。金メダルなんかなくたって、君は最高。あのお金賭けてたおじさんも森じいさんと同様、後味の悪い思いで反省しているでしょう。

 

 

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