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黒川 春男

築地の風景

 

 

 

by 築地本店店長、黒川春男

 

 

201421

 

ヒューンヒューン、冬でござんす。北風小僧の寒太郎が今年も街にやってきた。毎朝、北風に突進しながら築地に出勤。暗闇の中、大江戸線勝どき駅の交差点は電飾で明るい。この辺りの再開発で数倍に増えた乗降客を捌くため、駅の拡張工事をしているらしい。 

今年初の散髪に行った。この理容店はかなり高齢のおじいさんがやっている。昨年、手伝っていたおばあさんの姿が消えて、店先のくるくる廻る看板は止まった。休業の張り紙もなく、やっている様な、いない様な。ある日思い切って自動ドアを開け、「すいません」と声をかける。奥の引き戸からおじいさんが顔を出す。「やってもらえます?」。「あいよ」と白衣を羽織る。顔なじみの客だけをやっているらしい。今日も裏に声をかけ、出てきてもらう。理容イスに乗るとウトウトしだすのだが、話好きのおじいさんが話しかける。「最近、道端を歩く二宮金次郎が多くない?」。「薪を背負って歩きながら本を読む、あの銅像の?」。「そう。本は読まないけど、一心不乱に手元を見つめて歩いている。スマホって言ったっけ。カマボコ板の様な物をさわって」。「それって、歩きスマホのことですか。

アナログ人間の私の携帯電話料金は、毎月千円ちょっと。田舎と自宅への通信だけだ。そんなに調べなきゃいけない事がたくさんあるのか。ゲームやチャット、ネットサーフィンに没頭して、身の回りへの注意力は、ほとんどゼロ。線路に落ちたり、柱にぶつかったり、ガラス戸に体当たりしたり。

スマホに夢中で転倒したのではなく、軽い酩酊でコンクリート道に激突して骨折した伏高の松ちゃんに、隣の由美ちゃんが、「今どきガラケーなんて。スマホでなきゃ時代から取り残されるんだから」と言われていた。スマホにもパソコンにも無縁の松ちゃん。「じゃアイフォンにしようかな」とトンチンカンな答え。時代に取り残されるというが、ツイッターとかフェイスブックとか不特定多数の人とつながっているって、わずらわしいだけだと思うのだが。「はい、どうぞ」と散髪は終わり、スマホに乗れないおじさんの妄想も終わった。

 

 

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